高校受験対策

「模試」を甘く見た親御さんの後悔…中学生の親が知っておくべきこと

また模試の話で恐縮ですが、Yahoo!知恵袋で、こんな質問が「高校受験」カテゴリの1位になっていました(今は違う)。

子供が高校受験に失敗しました。私が何ヶ月経っても立ち直れません。- Yahoo!知恵袋

子供が高校受験に失敗しました。私が何ヶ月経っても立ち直れません。志望校を下げていれば、と後悔ばかりです。 模試の判定を見れば、C判定かD判定にしかならなかったので、落ちて当たり前でした。しかし、子供の行きたい高校...

内容をかいつまんで説明すると、

  • 高校が高校受験に失敗し、8月になっても親自身が立ち直れない
  • 模試の判定はC判定とかD判定だったが、「模試は難しいから(大丈夫)」という人の言葉を鵜呑みにしていた
  • 学校で30位あたりだから実力にあった良い公立高校に入れると思っていた
  • 志望校を下げていればよかった
  • 家庭教師を利用していたが、模試の提案がなかった
  • 模試は親の判断で受けさせた
  • 家庭教師の塾長も、模試の結果でも「このくらいの内申でも大丈夫」と言われた
  • 自分も含め、大人達が本当に馬鹿だった
  • 家庭教師にクレームを言うべきか?

というものです。

受験生があまり多くない鳥羽見寺子屋ですが、「愛知全県模試」という模試を開催している立場からすると、模試の結果を甘く見る時点で高校入試をなめているとしか思えませんが、おそらくですけど、進学メインではなく、補習メインの家庭教師会社だったのでしょうかねぇ? それとも、自分たちが勧めていない模試を勝手に受けられて、サポート外と思っていたのでしょうか?

まぁ、くわしいことはわかりませんが、高校受験についてあまり知らない親御さんからすると、目の前の指導者を信じ、そして裏切られたと思うのもムリからぬことです。

 

子どもは高校受験の厳しさを知らない

この親御さんは、子どもの実力で落ちたのは仕方ないけど、自分も含めて大人達が子どもをキチンと導いてあげられなかったことを悔いているようです。

たしかに、ほとんどの子にとって、高校受験は初めての受験ということがほとんど。

だから、子どもの見立てが甘くなることはよくあります。

私自身も中学時代は、模試も受けず過去問もやらず、「受かるやろ」と思って公立校入試を受けたら、2校とも(愛知は2校受験可能)落ちた経験があるので、見立ての甘さを恥じるばかり。

でも、私自身、すべり止めの私立高校に通いながら思ったのは、

「やっぱりちゃんと高校受験の勉強しておけばよかったな」

という気持ちです。

たしかに、塾に行ってなかったから知らなかったのではありますが、「模試」や「過去問」の重要性とか、高校受験対策のテクニックとか、学校の先生達に「言っといてよ!」ということも多々ありましたけど、それでも、自分が、

「これ以上ムリ!」

というほど本当に精一杯勉強したのかというと、そうでもない。

実際、記憶力がなまじいいものだから、塾に行かず、フツーに宿題とかしていれば定期テストではそこそこいい点取れるし、なんならテスト前日でもゲームしてたくらいだしで、それでも常時8~90点台だったら、焦らないんですよね。

だから、まぁ、高校落ちても悲しくはなかったですよ、全力でやってないから。
自分の責任ですからね。

ただ、親御さん目線で見ると、実際のこの子がどうだったかはわかりませんが、かつての私のように「高校受験」というものをしっかり理解していない子は、思った以上に高校受験に苦戦するのが現実ということを知っておいてほしいですね。

 

「高校受験」には対策が必要です

多くの子が通う公立中学校は、「高校受験のため」の教育をしていません
それは、義務教育というものが、社会を構成する社会性のある人材の育成を主眼に置いているからです。

なので、たとえば塾で先取り学習をして、定期テストで点数が上がっても、授業態度が悪かったら内申が下がることもあります。

親御さんのご記憶にもある通り、評価は勉強だけじゃないんですね。

そんなだから、中学校でも高校受験のための指導ばかりに力を注いでいるワケじゃありません。

『マイペース』や『新研究』『整理と研究』など受験用の教材を生徒に買わせたり、その進捗をチェックしたり、3年の後半になると授業を自習時間にしたりしますが、塾のように戦略立てて学習計画を立ててくれたり、高校選びをしてくれる所は少ないでしょう。
私立高校や進学塾のように「進学実績」がウリになるワケでもないですしね。

この辺は寺子屋でも特に気にしているところで、そうなると結局、塾に行ってない子の方が圧倒的に「不利」なんですよね。

たとえば先ほどの親御さんの例で行くと、模試のC判定やD判定で「大丈夫と思った」というのは、危険ですよね。

寺子屋でやっている「愛知全県模試」では合格率しか出ませんが、C判定はたいがい50%前後で、D判定は35%前後くらいですよね?

たしかに、模試は参考程度にしかなりませんけど、合格ラインじゃないのに対策も講じないなんて自殺行為ですよ。

だって、定期テストでは、最近習ったところしか出ませんから、そこそこ学力がある子であれば、なんなら「ノー勉」でも点がとれてしまう。

でも、模試は範囲が広く、定期テストには出ないような難解な問題も普通に出てきます。

しかしそれは、高校受験でも同じですし、多くの模試が、実際の(特に公立の)入試の問題を徹底的に研究して作られています。

だから、そんな模試が難しいのは当然で、そこから、「じゃぁ、ちゃんと対策をしないといけない」と考えることができたか、できなかったか

この違いが、高校受験の正否を分ける大きな分岐点になることも少なくありません。 

 

「ウチの子ならたぶん大丈夫」? “たぶん”じゃダメ!

そもそも、模試の結果は、子どもの学力の「客観的データ」なんです。

データはあくまでもデータですから間違うこともありますが、それなりに「参考になる」値が出ます

たとえば仕事で、「こういうデータが出ましたよ」というものを、軽く考える人ってどうなると思います?

失敗しますよね。

新型コロナウイルスが日本に入ってくるときも、他の国では「SARSやMARS以上に危険だ」というデータがあったのに、

「日本ではSARSやMARSが流行しなかったから大丈夫」

と思っていた人が多かったので、政府もマスコミも初動が遅れましたよね。

客観的なデータよりも、「こうなるだろう」「こうであってほしい」という気持ちを優先してしまう「確証バイアス」というのが働いていたからです。

これは子どもの受験にも言えて、「ウチの子はこれくらいの学力だから大丈夫だろう」「この子はこれくらいの成績の高校に行けるハズだ」というのも、確証バイアスでしかありません。

この親御さんは、大人としていままでの人生経験から、そういうことを知らないわけがないのに、家庭教師や他人の言うことを鵜呑みにして、「大丈夫」と思ってしまった、つまり確証バイアスを持ったまま、愛する我が子を受験に立ち向かわせ、行きたい高校に行かせてあげられなかったことを後悔しているのです。

その結果、今になって冷静に客観的に考えれば、あれはダメだろうと悶々としてしまうのです。
(共感してもらえてスッキリはしたようですが)

 

受験力を上げる、模試の活用方法

たしかに、「学力のレベル」で高校を選べたらこんな事は起こらないでしょうし、実際にその高校に入ったら、ちゃんと授業についていける可能性はあるかもしれません。

しかし現実は、受験があります。

そして、模試でダメだったわけですから、本番でもそうなる可能性が少なくない。

とくに初めての模試は難しすぎる問題や文章量に、どの子も面食らって、本来の実力が発揮されないことが多々あります。

実際、寺子屋でも、はじめての模試の偏差値・合格判定はスコンスコン笑という子が多いですね。

だから、模試は最低2回はやってほしいですね。

2回はやれば、だいたいのその子の実力が見えますからね。

そこでも合格判定が低いのだったら、
残念ながらそれが、お子さんの「受験の力(受験力?)」なのです。

もちろん、学力がなければ受験力も上がりませんが、学力があっても受験力が上がるとは限らないのはお話ししたとおり。

学力に見合う受験の対策が出来て、受験力が上がることで、志望校の合格可能性が高くなるのです。

とはいえ、模試を受けて「合格判定」だけを見て終わり、「本番は気をつけよう」と思うのは危険信号です。

 

「模試」は失敗から学ぶチャンス!

内申40超えるような子は別として、子どもは自分がミスしたことはわかっても、それを実際にくり返さないようになるためには、訓練が必要だということを知りません。

模試でミスをしても「ケアレスミスだから」と思っていたり、「勉強してなかったから」と思っていたりしたら、ほぼ確実に、受験本番でも同じようなミスをします

自分の失敗の原因を解決しないと、同じ失敗をするのが人間だからです。

二昔ほど前、『だめんずうぉ~か~』というマンガが流行りましたが、「だめんず」に恋する自分を変えらず、だめんずに引っかかる、変えられない恋愛観を持つ女性達の話でしたね。

それと同じで、親御さんに大切な視点は、人はデフォルトでは「変わらない」と考えることです。

そのため、学力に見合わない模試結果が出たのであれば、本番に向けてそれを変えるために、「どこがダメだったのか」しっかりと分析する必要があります。

本当に実力が足りないのか?

ただの計算ミスだったのか?

時間がないから焦ったのか?

初見の問題に弱いのか?

応用問題に弱いのか?

そういったことは、模試の結果を「ちゃんと見返す」ことをすれば、ある程度、本人でも出来ることです。

もちろん、やれない子の方が圧倒的に多いと思いますが、やらないと、本番では同じミスをする可能性が大ですからね。

そうならないためにも、原因を分析した上で、しばらくしてからもう一度同じ模試の問題にチャレンジしてみるのも1つです(時間は5分短くするとか)。

やった問題なのに1回目より点数が大きく上がらなかったら、何も成長していないことになりますからね。

 

「模試」は高校入試のシミュレーション

そもそも模試は「模擬試験」の略です。

「模擬」というのは本物を真似てする事ですが、もっとわかりやすく言えば、

模試は「入試のシミュレーション」

ということですね。

実際、「本番の雰囲気に飲まれないため」という目的で模試を受ける人もいます。

これも立派なシミュレーションの1つです。

でも、シミュレーションはただの「体験」ではなく、「入試」という本番(実戦)に向けて、「こうやったらどうなるか?」「これをこうしたらどうなるか?」という試行錯誤を行うことですから、

模試を受け、志望校の合格率を見る、
というのは模試の使い方としては半分ほどしか効果がありません。

大事なのは、中身です。

特にある程度学力がある子であれば、

どこで「失敗」したのか?
何が足りなかったのか?

それは、改善できることなのか?
それとも現状では難しいのか?

そういった分析をし、対策しないと、同じ失敗をくり返す恐れがあります。

それが模試の失敗ならいいのですが、本番の入試だったら?

「模試」は、本番に失敗しないためにするものです

だから、模試では失敗してもいい。

むしろ、失敗から何を学ぶか?

そういうことができればきっと、判定がDでも合格できたかもしれませんね。

 

模試で大事なのは、受験に勝つために「使う」こと

寺子屋の受験生も何回か模試を受けさせていますが、模試の「点数」や「合格判定」だけを見るよりも、答案の「中身」を見て志望校を目指せるかどうかという話をしています。

たとえば愛知県公立高校入試の場合、各教科22点満点中、数学は9~10点が、基礎的な計算や簡単な文章題や図形問題である大問1に集中し、大問3の図形問題も、意外と解ける問題があります。

そこで「とりこぼし」が目立つようであれば、そこを重点的に鍛えるだけで、難問は捨てさせても基準点はとれます。

鳥羽見寺子屋は進学塾ではなく、基本的には「塾に行きたくない子」「勉強が苦手な子」「勉強が嫌いな子😅」が集まる所ですから、現実的な戦い方を教えてあげるわけですね。弱者の戦略というか。

だから、模試の合格率が50%だった子がいても、「もうちょっと上積みできる」点数が見込めるのであれば(すべり止め高校があることが前提で)、第一志望の高校でもチャレンジさせ、そのための勉強をさせます。

昨年は実際にこの方法でみんな公立第一志望に合格してホッとしていますが、それでも落ちることもあるでしょう。

でも、それだけやってもダメなら、本人が「しょうがない」とあきらめがつくじゃないですか。

大事なのは、できる限りの手を尽くして、目標を達成しようとする事です。

たぶんこの親御さんが一番悔いているのは、それをやらなかったこと。

別にお金をかけるかけないとかではなくて、目標に対して、真剣にぶつかるか、ぶつからないか。

高校受験だけで人生が決まるわけではありませんが、そういう経験を子どもたちにさせられると、どの高校に行こうが「いい受験」になるのではないかなと思います。

模試はあくまでもその「手段」の1つです。

「道具」と言ってもいい。

大人達は、子どもが目標を達成できるように、道具の使い方を教え、そのサポートをするしかないんじゃないかなと思います。

  • この記事を書いた人

メンター 田中聖斗

名古屋市守山区で地域の学び舎『鳥羽見寺子屋』を主宰。塾に行けない・行きたくない子の学習指導や、子どもたちの学びを促す特別授業をやっています。子どもたちに寄りそうことを重視し、どんな子でも受け入れています。作家・企画屋・家庭教育アドバイザー・教材開発者です。花粉症の舌禍免疫中のため、現在は年中メガネです。

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