寺子屋の学び

算数・数学の文章問題を苦手にしないプログラムを始めます

算数や数学の「文章問題(文章題)」って、苦手な子が多いですよね。

「文章を読むのも苦痛」

「何を言っているかわからない」

「これって、かけ算なの?わり算なの?」

「やったことがないからわからない」

そんなことを言う我が子の姿を見たことはないですか?

算数や数学に限らず、多くの子が文章問題を苦手としていながら、時代はどんどん文章問題を増やしているのが現実です。

 

「思考力を問う」ため文章題が増えている

これは大学共通テスト(旧センター試験)だけでなく、高校入試や、中学の定期テストまで、かなりの文字数の文章問題が当たり前になりました。

R4年度 愛知県公立高校入試(A日程) 理科p2-3

ちなみにこれは昨年度の愛知県の公立高校入試の理科の問題ですが、見開き2ページにわたって長文が続く大問2の問題数はたったの「4問(22問中)」です。

他のページも文章問題だらけで10ページまであり、時間は45分で解かなければなりません。

「理科」といえば「社会」と並び「暗記教科(時々計算)」というイメージの方もおられるかもしれませんが、今は、単純に「○○は何か」みたいな問題はほとんど出ません(ちなみに上記理科の問題では1問だけ「水上置換法」と書く問題だった)。

暗記できるような「基礎的な知識」があることを前提とした、より応用的・発展的な問題として問うようになって来ているのです。

これは、入試にしろ、定期テストにしろ、たくさんの問題を数多くこなす、というのではなく、長い文章の問題を考えて解く、いわゆる「思考力」を問う問題が増えてきている、ということですね。

 

「思考力」を問う前に、身につけられているか?

しかし現実問題、小学校の算数の文章題でもつまずく子がいる

それも一人や二人ではなく、結構な数の子が。

AI時代になることで、人間にしか出来ない「思考力」を大事にしたいというのが今の教育のトレンドで、文科省の定めた『学習指導要領』も、大学や高校入試も「思考力」をやたらと重視するための、問題の長文化です。

もちろん、思考力は大切であることを否定はしません。

ただ、子どもたちの思考力は、本当に育てられているのか?

アクティブラーニングやプレゼンテーションなど、1つじゃない正答に向けてアプローチするやり方で、確かに子どもたちには以前より「考える」習慣が身につく経験をさせるようにはなりました。

ですがそれはメインではなく、オマケみたいなものです。

メインのいわゆる昔ながらの「勉強」については、中にはICTを活用している先生もいますが、従来通りの授業が行われていることが多いと聞きます。

たしかに、思考力を育てるのは学校だけではなく、家庭での親御さんの関わりも重要なのは確かです。

ですが、「考えなさい」と言ったからといって、思考力が身につくわけじゃない

思考力を身につけさせるための訓練をしないと身につかないのです。

「塾に行かずとも頭がいい子」

というのは、遺伝もありますが、それ以上に家庭でそういう習慣を身につけさせられた子がほとんどです。

塾なし公立校でハーバード!母が幼児の娘にさせた「家庭学習」という遊び | FRaU

小学校から高校まで公立校に通い、ハーバード大学に現役合格(そののち首席で卒業)した廣津留すみれさん。大分という地方都市に生まれ育ち、海外留学したこともなければ、塾に通ったことも模試さえ受けたこともなく、ハーバードの面接も自宅の部屋からスカイプ受験。100%家庭学習だけで世界トップの大学に入ったすみれさんの学習習慣を支えたのは、すみれさんが0歳のときから真理さんと一緒に行っていた家庭学習だという。では実際どんなことをどのようにやったのだろうか。

そして、その思考力がないと、文章問題は、正しく解けません

そのため、鳥羽見寺子屋では、小中学生に向けて、文章題を解く地力をつけるプログラムを開始することにしました。

でもその前に、ちょっと長いですが、「なぜ、文章問題が苦手なのか?」というお話をさせて下さい。

 

「脳死プレイ」で文章問題を解いていないか?

そもそも、算数に限らず、文章問題って、そもそも難しい応用問題として作られているので、スムーズに出来ない子がいても当たり前なんです。

学習教材は、一般的に、

基礎➡応用➡発展

という順で展開していくように問題も作られています。
(小学校の場合は「基礎➡応用」で終わるパターンも多いですが)

だから、順番的に行くと、「基礎」が出来ていない子が、「応用」の文章問題ができないのは本来は当たり前です。

ですが、特に小学校の算数だと、文章題の意味をわからなくても、習った計算方法を使えばそのまま解けてしまう、ということがよくあります。

たとえば、

1Lのガソリンで9.8km走る自動車があります。
ガソリン12.5Lで何km走ることができるでしょうか。
※最近の教科書はリットルを「ℓ」ではなく「L」で表します

正答:122.5L

という問題が出てきたとき、単元が「小数のかけ算」だったら、

「小数の9.8と12.5をかければいいんだ」

として、残念なことに、問題文の意味を特に考えず正答にたどりつくこともあるわけです。

今どきの子どもたちの言葉で言うと、脳死プレイというやつですね。

脳死プレイ

脳死(実用日本語表現辞典より)
(2)ゲームなどにおいて、特に戦略を練ったり戦況に注意を払ったりする必要がなく、何も考えずに淡々と操作していればゲームが進行するさまを指す言い方脳死プレイ、脳死ゲー、といった言い方で用いられることが多い。

 

脳死プレイでは本当の「応用」ができない

もちろんこれでは、脳をちゃんと働かせずに解くものだから、「できた」ように見えて、実は「わかって」はいないんですね。

だから、この問題が、「分数のわり算」の単元に出てきたとしたら、

「大きい12.5を9.8で割ればいいんだ」

とわり算にしてしまう子もいます。

つまり、間違った「応用」の仕方をおぼえてしまっているのです。

 

実はこれ、結構な数の子がおちいります。
だって、簡単ですもんね、パターンの流れでやった方が。

ただこのやり方では、「常に100点」をとるのはムリです。

なぜなら、たまに違うタイプの問題(本当の意味での応用)が出てきますからね。

ですが、それで答えを間違えても、単に「ミスした」で終わらせてしまう子も多いです。
本当は問題文の意味をキチンと理解できていないから起こったミスなのに、「たまたま式を間違えただけ」ととらえてしまうのです。

実際はよくわからないまま「ギャンブル」をしてるだけなのに、「ミス」と勘違いしているのです。

そういうことをくり返したまま中学生になって、

「文章問題が全然解けない」となっても当たり前です。

なぜなら、文章問題の解き方、そもそも向き合い方が間違っているのですから。

それなのに、文章問題の演習をくり返しても、解けるようにはなりません。

 

必要なのは、基礎+読解力・想像力・思考力

文章問題に必要なものは、まず「基礎知識」です。

たとえば算数だったら、「少数のわり算」の文章問題でも、「整数のわり算」がカンペキに出来ないのだったら問題外ですよね。

また、単純な計算方法を理解していないと、計算ができません。

それがないのにいくら文章問題をやっても無意味です。

計算が速いとかではなく、ちゃんとした計算方法で計算できるか、ということですね。場合によっては学年を落として復習する必要がある場合もあります。

 

その上で、文章題を解くために必要なのは、3つの力が必要だと考えます。

問題文を読み解く「読解力」

まず必要なのは、問題文をちゃんと読めること

たとえばこんな問題があるとしましょう。

秒速6.8mで、1周190.4mのグラウンドを5周すると何分何秒かかりますか。

「秒速」がどういう意味かも知らないといけませんし、「何分何秒」で答えなきゃいけないんだとわからないと始まりません。

ですが、これも出来ないという子もいるわけです。

さらにこれが、

1周190.4mのグラウンドを、秒速6.8mで5周すると何分何秒かかりますか。

と、さっきと出てくる言葉や数字の順序が違うだけで意味を正確に捉えられない子もいます。

そのため必要となるのは、問題文をちゃんと「読んで」「理解する」こと、つまり「読解力」ですね、これができないと、始まらないのです。

だから、言葉の意味がよくわからない子、語彙が少ない子、文章の作法を感覚的にでも理解していない子は、この時点でつまずきます。

つまり国語の能力に関わるところですね。

 

状況をイメージできる「想像力」

文章問題は単純化したモデルになっていることはあっても、必ず「状況」を形に出来るようになっています

ですから、先ほどの問題であれば、

・1周が190.4mのコースを5周
・1秒間で6.8mのスピードで走る

という状況として整理し直した上で、

・952mを6.8秒のスピードで走る

ということと同じ状況なのだとイメージすることができ、

190.4m×5=952m

という式が作れます。

つまり、状況をイメージする力、つまり「想像力」が必要なんですね。

 

困った時の・・・公式?

ここまでは比較的多くの子ができることです。

ですが、じゃぁ、「952m」と「6.8秒」をどうするのか?

ここで悩む子は多いと思います。

かけ算にしたり、わり算にしたり、
中にはなぜか、足しちゃったり、引いちゃったりする子もいます。

そこで役に立つのが、「みはじ」の公式ですね。

「きはじ」「はじき」「きそじ」など覚え方は多数

これを使えば、

みちのり=952m
はやさ=6.8秒

とすればいいので、

952÷6.8=140(秒)
答え:2分20秒

となるわけですね。超便利。

 

解き方を導き出せる「思考力」

では、「公式」を習ってないと解けないのか?
公式を忘れてしまったらどうすればいいのか?

でも、公式がなくても解けるのが「思考力」ということです。

たとえばこのケースでは、

 

このように、952mと、問われている□秒を線図にして考えることができれば、公式を習っていない学年の子でも解くことは可能です。

秒速6.8mというのは、一秒間に6.8m進むという意味なので、6.8m=1秒ということです。

952mは、6.8mと「距離」という概念(単位)が同じなわけですから、952mは、6.8mの集まりだということがわかります。

とすれば、952mの範囲の中で6.8mが何個あるか?ということなので、

 

952mを6.8mで割るしかなく、その計算は「6.8mが何個分?」ということになります。

6.8m=1秒だから、その個数分が秒数になるということなので、結果的に

952(m)÷6.8(m/秒)=140(秒)
答え:2分20秒

という計算になるワケですね。

文章を読み解き、図をイメージして、イメージから考えられれば、公式を知らない学年の子でも実はこの問題は解けるのです。

別解

ちなみに1周あたり何秒かを計算してから5周分かけた方が解答は早く出ます。

190.4÷6.8=28秒
28秒×5=140秒=2分20秒

 

文章題苦手な子は、図に出来ない!

文章題が苦手な子は、こういった考え方が出来ない子がほとんどです。

かといって、文章題が得意な子が、みんな図を書いているかというとそうでもなかったりします。

公式を使ってさっと解いたりすることもありますし、何べんもくり返している内に「そういうものだ」と暗黙知として、勝手に手が動くという子もいます。

図を書く工程を飛ばしても、解き方がわかるわけですね。

ですが、図で書くということは、出来ない子にとっては、本当は大事な作業なので飛ばさない方がいい。

なぜなら、問題文の内容を正しく理解していないと、正しく図に出来ないからです。

実際、文章問題で解き方がわからない子に図を書かせようとしても、「何を書いたらいいのかわからない」というような状態になります。

学校では、線分図など図を使って説明していますし、教科書にも書いてあったりします。

でも、それを「見ただけ」「写しただけ」では、使えるようにはなりません。

あくまで、自分の考えを助けるために、図が書けないと。

しかし、学校ではそこまで一人一人に「図の書き方」を丁寧に指導してあげることは出来ません。

おうちや塾でも、文章題の問題をくり返すしかありません。

その結果、「わかってないのにわかった気になった子」や「わかってないままそのままにしている子」が生まれ、結果的に、「応用」問題である文章問題が解けないのです。

つまり、「応用」する方法を、自分のものとしていないのですね。

なんでもそうですが、出来ないものを出来るようにするためには、出来るようになるまで練習するしかありません

ですが、ここをやらない、やらせられないことが多いのが現実ではないでしょうか?

なにせ、文章問題は「楽しくない」「めんどくさい」の代名詞ですからね。

 

文章問題を楽しく攻略するスキルを身につける!

そこで寺子屋で導入するのが、「お絵かき算数ドリル」です。

このドリルは、教科書っぽくないユーモラスな内容で、問題文自体が、単純に数字を当てはめできない内容になっていて、このような問題文となっています(しかも長め)。

三つ目小僧チームと一つ目小僧チームがドッジボールをしています。三つ目小僧チームのほうが2人多いようです。全員の目の合計は22個です。三つ目小僧チームは何人いるでしょうか。

(地頭を鍛える学習教室)

三ツ目小僧と一ツ目小僧だから絵が奇妙だったんだと思いますが、問題文にある「全員の目の合計は22個」というやっかいそうな文言が入っていますが、文章をそのまま絵にしていくと、数人書くだけで目が22個になり、三ツ目小僧の方が2人多いようにキャラクターを描いていくと、算数を習っていない幼稚園児でも問われている答えが導き出せるのです。

(下記は同じドリルを採用している塾の模様)

 

脳死でくり返すより、一つひとつ考えて、そして楽しく

これを「力業」と感じる人もおられるかもしれませんが、そこではなくて、まず大切なのは「文章問題」を解くために必要な「読解力」。

文章に書かれていることを、自分の手で正確に再現していくという作業ができるようにしていくのです。

もちろんサポートも必要でしょうが、本人が、書かれている内容を「イメージ」できるようにならないといけませんので、1回だけでなく、同じような作業をくり返しくり返しやっていく必要があります。

だから、ユーモラスな内容の問題の方がいいし、絵も、いかにも算数的じゃなくても、本当に「お絵描き」として描いてもいい。使いたければ色鉛筆を使ってもいい。

問題文を絵にしながら、その過程で、問題文の意味を読み解く「読解力」、描きながら状況をイメージできるようにする「想像力」、そして完成した絵から答えを導き出す方法を考える「思考力」を身につけることができるわけですね。

もちろん、数をたくさんこなすのではなく、ひとつひとつ丁寧にクリアしていく事が大事。

絵を描きながら、自分の力で、上の学年のレベルの文章題が解けるようになっていくのが理想です。

これは「脳死プレイ」でひたすら文章題ドリルをやるよりはるかに、文章題を解く力が身につきますし、何よりも、自分の頭でちゃんと考えて、クリアしていくという経験を積み重ねることが出来ます。これが一番大きい。

 

そんなわけで、寺子屋では、9月から、「文章題強化プログラム~絵で描く算数~」を実施することにしました。

新しい取り組みなので今後どうなるかわかりませんが、英語クラスのように定期的にするのべきか検討中ですがひとまず9月は、土曜の特別授業(1コマ)枠で開催します。

「文章題が苦手」

「単調な計算練習はキライ」

「算数より図工が好き」

そんな子たちに参加していただけたらなと思います。

なお、絵がうまくなくても大丈夫です。自分がわかればいいですからね。

それに、絵を上手に描くコツなどは教えることも出来ますので、気軽に参加していただけたらなと思います。

無学年式なので何年からでも参加できますし、逆に「簡単すぎる」場合はレベルを上げることもできますので、どの学年も(中学でも)遠慮なくご参加下さいませ!

  • この記事を書いた人

メンター 田中聖斗

名古屋市守山区で地域の学び舎『鳥羽見寺子屋』を主宰。塾に行けない・行きたくない子の学習指導や、子どもたちの学びを促す特別授業をやっています。子どもたちに寄りそうことを重視し、どんな子でも受け入れています。作家・企画屋・家庭教育アドバイザー・教材開発者です。花粉症の舌禍免疫中のため、現在は年中メガネです。

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