寺子屋特別授業 メンターのひとり言

イカを解剖して、美味しくいただきました!~解剖から学べること~

鳥羽見寺子屋の長期休暇特別企画「学んで作って食べる会」の夏休み第3弾は、イカの解剖&調理でした!

私の子どもの頃の1980年代は、ちょうど「カエルの解剖」をやらなくなっていった時代で、学校で解剖をすることはありませんでしたが、その代わりに今学校で行われているのが「イカの解剖」です。

カエルの解剖は基本的に「殺す」という行為が入るため、動物実験と同じく残酷な行為として廃止になっていったわけですが、イカは基本的に死んだ状態で売られているので、「殺す」という残酷なことをしなくていいというのも大きいようです。

イカの解剖?

また、今は中学で「軟体動物」を学ぶようになっているため、数年前まで、中学の教科書にもイカの解剖が載っていたんですね。

大日本図書『新版 理科の世界2』

それで、夏の宿題として「イカの解剖をやって、やった証拠に痕跡器官(軟骨状の筋)を持って来い」というのがあったんです。

現行の教科書から消えた関係でその宿題はなくなってしまったようですが、以前、その宿題に合わせて「寺子屋でイカの解剖をやってほしい」とリクエストがあってやったことがあるんです。

2019年にやったときの写真

この時、最初は「気持ち悪い」と嫌がっていた子どもたちの反応が、非常によかったんですよね(その後おいしくいただいたというのもありますが)。

解剖を学校の授業でやらなくなることもあって、科学的な好奇心を満たす貴重な機会なのに「もったいないな~」と思ったので、どうせならそのままイカ料理もやっちゃおうと、「学んで作って食べる会」としてやることにしたわけです。

イカの解剖はグロい!本当に触れる?

そんなわけで今週、2回に分けてイカの解剖を開催しました。

1回目は月曜ということもあって、前日の日曜日にはBBQ用にカットされたイカの方が多い💦という現実に苦しみながらなんとかイカを探し出して、2チームに分かれてハサミと包丁、ピンセットなどを使って解体していきました。

最初は恐る恐る・・・

それにしても、やっぱり生で見る生物の臓器というのはインパクトがありますよね。
(以下、写真注意です)

メンター

生の「気持ち悪さ」を体験することも悪いことではありません。

今は教育の効率化、清廉さばかりが叫ばれ、何でも動画で済ませられる時代ではありますが、あえて、自分の手で苦労しながら解剖していく、というのは動画で見るだけよりもはるかに濃い経験になります。

メンター

その上で動画などで詳細を学び補完すると理想ですよね。

解剖というと「気持ち悪い」というイメージが先行し、実際、子どもたちの手にかかると、最初はビビって何もやりたがらない子も少なくありません。

寺子屋は「自由な学びの場」なので、やりたくない子にはムリにやらせません。

メンター

学校では「レポート(成績)のため」という目的があるので、強制的になるのが問題という人もいますね。

なので、誰もやらなければメンターが腑分けするわけですが、たいがい、誰かが興味を持って手をあげます。

一人がやり始めると、それを見て、「私もやってみようかな」となるのがお決まりのパターンです。

メンター

そもそも、死んでもムリ!という子は参加しませんしね笑

実際、最初は「うえ~」と言っていた子が、慣れてくるとあれこれグチャグチャさわるようになります。

イカの吸盤がタコの吸盤と違ってトゲトゲしいというのも、触れば一発で理解できます。

触ってこそわかることもある

内臓を触ることに慣れてくると、子どもたちは遠慮なく内臓をバラします。

残酷といえば残酷ですし、「死体をもてあそぶ行為」とも言えなくもありませんし、動物がかわいそう、という考えもわからなくはないのですが、触らなければわからないものもあります。

たとえば、「イカは墨を持っている」というのは誰でも知っていることですが、どこに墨があるのか、どうやって吐いているのか、というのは知らない子がほとんどです。

メンター

イカの「口」から墨を吐くのは間違いですからね!

墨袋がどこにあるかは、「解剖図を見ればわかるじゃん」というのは正論ではありますが、墨がどれくらい入っているのか?というのは、実際に出してみないとわからないものです。

墨袋を取り外してみる

実際に取り出してみることで、墨って案外少ないんだなとか、イカスミパスタ作るのも大変だなとか、完全な黒じゃないんだなということがわかったり、墨がほとんど残ってない墨袋もあるんだな、なんでだろう?と不思議に思う気持ちが芽生えます。

正しく「知る」という行為は、先入観を取り除いた判断力を育てるために必要なことなので、こういう「実体験」を寺子屋では特に大事にしています。

メンター

知らないからこそ偏見や差別がなくならないので…

解剖は、快楽殺人者を生むか?目的を明確にすること

とはいえ、「解体を楽しむなんて…シリアルキラーみたい」なんて言われても仕方ないくらい、子どもたちは遠慮なく内臓をいじくり倒します。

ここまで来るともはや芸術?

実際、快楽殺人者の多くは小動物の解剖を楽しみ、「人を解体してみたかった」という、そんな目的で?という理由で人を殺すことがあります。

それと、学習者の解剖と一緒にするのはちょっと暴論かなと思いますが、決定的な違いは「何のためにするか?」です。

別に解剖しなくてもいいじゃん、動画でいいじゃんというのもわかるのですが、やっぱり理科の本質的な魅力っていうのは、こういう実体験にもとづく、世の中の不思議を解明しようとする行為そのものなハズ。

メンター

そう考えると、最近の理科の受験問題は理科嫌いを増やしているだけだと思うのですが…

というのも、なんだかんだ言って、人間が生物を「利用」しているのはまぎれもない事実であり、大切なのは何のために利用するのか、という目的の方です。

そこへ行くと、快楽殺人者は自身の快楽のためだけに解剖をするのです。

そこに「学び」という目的もなければ、未来に活かすための経験を積むためでもありません。

なにより、誰かの役に立つための解剖だったら、適切な進路に進み、解剖医や、生物学者になるという道もあるわけですからね。

解剖するのがおかしいのではなく、何のために解剖するのか、ということをキチンと明確にしてあげないで、ただただ「それはダメだ」と抑圧するようなことになりがちです。

メンター

それこそ、歪んだ執着心が生まれることだってありますからね。

奪った生命をおいしくいただこう

そういう意味で、今回のイカの解剖は、学び+調理ですから、ただただ解剖して終わり、ではなく、あくまでも美味しくいただくまでがゴール。

そのため、食べる部分はしっかりとキレイに残した状態で調理していきます。

メンター

ただただ生命をもてあそぶだけじゃダメですからね

油に入れた時にはねないように、ひたすらイカの皮をめくる地味な作業笑

「かわいそう」を言い出すと行きつくところは、ベジタリアンやヴィーガン(完全菜食主義者)になります。

それはそれで主義主張なので自由だと思うのですが、あくまでも学校と同じスタンスでやる以上、生き物をいただくことまでは否定しません。

ですから、せめておいしく!

ということで、イカ料理を作りました。

子ども的にはイカリングフライが人気ですが、なにせ開いてリングですらないし、フライは工程が多いので、唐揚げをメインで作りました。

さらに、もう一品イカ料理(とサラダとご飯と味噌汁)をつけたイカ料理定食が完成しました。

ただ、思いのほか、みんなイカの解剖に夢中になっていたので笑、料理作りは時間がカツカツ!

油であげるのも体験させてあげられなかったので、来年やる時はもうちょっと考えないとな~と思いました。

なんにせよ、イカありがとう!!

  • この記事を書いた人

メンター 田中聖斗

名古屋市守山区で地域の学び舎『鳥羽見寺子屋』を主宰。塾に行けない・行きたくない子の学習指導や、子どもたちの学びを促す特別授業をやっています。子どもたちに寄りそうことを重視し、どんな子でも受け入れています。作家・企画屋・家庭教育アドバイザー・教材開発者です。花粉症の舌禍免疫中のため、現在は年中メガネです。

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