毎年5月以降になると、高校の「体験入学」の受付が本格化してきます。
しかし、進学塾でゴリゴリやっている子でない限り、その時期に受験モードになっている子はかなり少ないのではないでしょうか?
そんな時期に始まる体験入学ですが、一体何をするのか? そして、行く必要はあるのでしょうか?
(2023年度の体験入学日程はコチラ)
高校の体験入学はぜひ行ってほしい!
ほとんどの中学3年生は、まだまだ受験モードになっていない時期ですが、高校の体験入学はぜひとも参加してもらいたいイベントです。
私自身は、高校選びに主体的でなく、男の集団行動が好きじゃないので共学志望でしたが、学校の先生がもう少しレベルの高い高校にと勧められて決めた高校(男子校)に行きましたので、「失敗したな~」と思いながら学校生活を送りました。
三者面談で先生から「どうしても共学がいいか?」と聞かれ、親の手前恥ずかしくて「いや、別に…」と言ってしまったことを後悔しました(今は共学になっている)
子どもが行きたい高校があるならそれが理想
私が保護者さまにいつも言っているのは、「子どもが行きたいと思う高校がいい高校である」とお話しています。
なぜなら、3年間そこで生活するのは子ども自身だからです。
親御さんではありません。
そこに通っている間に、必ず、勉強やら人間関係やら、色んな苦労があります。
しかし、そんな困難が立ちはだかった時、親御さんが選んだ高校だと、立ち向かうためのエネルギーが湧いてきません。
だから、子どもが行きたい高校が、「子どもが全力で学園生活を送れる」いい高校ということです。
実際、親御さんが偏差値や評判だけで選んで不登校になって、通信制の高校に転学する子は増えています。
通信制でも通学がある高校もあって、帰宅時間に非常に楽しそうに帰る子たちの姿も見られます。
結局、自分の人生の責任は自分で取るしかないわけで、それを手っ取り早く教えるには、高校選びも本人にさせるのが理想です。
そもそも、主体的じゃない中学生が多い中、自分から「この高校に行きたい」という考えがあるだけでも素晴らしいじゃないですか。
もちろん、親御さんの意見も必要だし、子どもの目線だけでは見えていないこともあるので、その点は気をつけるべきですが。
高校体験入学は表だけじゃなく、裏も感じよう
そこで行くと、高校の体験入学は、リアルな高校を見られる貴重な機会ですから、高校選びの材料としてとても魅力的。
もちろん、特に私立高校にありがちですが、「良いところ」しか見せないということはままあるでしょう。
でも、それが世の中というものですよね?
テレビでもネットでも、そんなものがあふれています。
人が学ぶ意義の1つとして、そういったものに惑わされず、人生をより良く生きるため、ということがありますから、高校体験入学を通じて、高校の良いところを見つけるだけでなく、悪い所も感じられるようになってもらうことも、学ぶことです。
体験入学に行って、「なんかわからないけど、なんかイヤ」と感じたのなら、自分には合わない部分があると直感で感じたわけなので、それはそれで収穫です!
ですから、ぜひともお子さんには、高校の体験入学に行かせてほしいんです。
日程によっては学校の授業を潰して行くことになる場合もありますが、今はYouTubeで授業動画などもたくさんありますから、授業の穴埋めは色んな手段で出来ます。
ですが、実際に高校に入って、そこの空気を吸うことはその時にしかできません。
会社でも、入社してみて違うなんてこと山ほどありますよね?
もっと情報を得ていれば選択を変えたのにと思うこともあるでしょう。
それと同じで、できるだけ事前に情報を得て置くことが大事で、ですから、体験入学は、社会経験が豊富な親御さんが、積極的に関わってほしいのです。
1学期は「受験モード」じゃない
もちろん、まるっきりお子さんに全部任せろ、というわけではありません。
なぜなら、体験入学が始まる時期に、子どもが高校選びに積極的ということはかなりまれです。
そもそも彼らの多くは、中学受験を体験することもなく、受験というものがどういうものか、高校というものがどういうものか、十分に理解してるとはいいがたい。
ですから、非常に高校受験に対してのんびりしていることが多いのです。
周りの子がのんびりしていたらそれに合わせがちです
その結果、高校生が行く大学の「オープンキャンパス」とは違い、高校を選ぶことに対して、あまり現実的に考えていないほどんどの公立中学生は、高校体験入学を軽視しがちです。
「高校を選んでから体験入学に行けばいいか」
と甘く考えている子も少なくありません。
しかし、高校の方としては、大学受験や就職にエネルギーをさかれる秋以降に体験入学はなんてやるヒマもありませんから、早い高校では、受付は5~6月で終了したり、体験入学も夏休み~遅くとも9月に終わらせることが多いです。
ですが、残念ながら、多くの子が「受験モード」になり始めるのは夏休み以降。
ですから毎年、「体験入学に行こうと思ったら受付終了していた」と平然と言い放つ子が出てきます!
そんなことにならないように、期限のある体験入学だけは、早め早めに準備しておく必要がある、というわけです。
意外と早く終わる所も少なくない
特に、体験入学や説明会というのは、公立・私立問わず人気の高校ほど受付が早く終わるものです。
公立で最も早いのは名古屋市立向陽高校の普通科で、5月中に締め切って6月に実施します。
人気すぎて来てほしくないのでしょうか!?
後で体験入学に参加するメリットでも述べていますが、高校の体験入学に行くことは、子どもたちにかなりプラスに働きます。
なのに、申し込みタイミングを逸してしまったがために、体験入学に行けないというのは非常にもったいない!
しかも公立の場合は申し込みが学校から、ということになるので、渡される一覧表の期限より早く申請しないといけない、という中学校もあります。
子どもたちはこの「〆切」の重みをわかってないので本当に注意です
ですから、よほど悪評の方が大きい高校でない場合、進路として行く行かないは決めかねていたとしても、とにかく一度、体験入学に行くことをオススメします。
体験入学に参加するメリット
体験入学に参加するメリットはいくつかありますが、大きく以下の3つがあげられます。
- 高校生活がイメージしやすい
- 数字だけじゃない高校の姿がわかる
- モチベーションが上がる
1. 高校生活がイメージしやすい
何度も言っていますが、ほとんどの中学3年生は、受験モードになるのは夏以降です。
夏休みまで部活をやっている子や、塾に行ってない子は特にその傾向が強く、みんなが焦りだす10月くらいになって、やっと自分も焦り出す、という子も少なくありません。
目指す高校によっては、「それじゃ遅い」ということもしばしば。
中学受験を経験している子ならいざ知らず、だいたいの子が「受験」や「学校を選ぶ」というのが初めてというだけでなく、高校そのものをよくわかっていない、という子も少なくありません。
そんな子に、いくら親御さんが高校の説明をしたところで、親御さんの経験してきた高校しか話せませんし、だいたい20~30年くらい前の話になるので、今の評判はどうなんだとか、今のICT教育などにどう対応しているかなど、今の視点が欠けてしまいがちです。
過去には「ヤバい高校」の1つだとされたところが、かなりの人気校になっているということもあります
また、行かなきゃわからない、ということも多々あります。
ネットの口コミも「参考」にはなりますが、あくまでもその人の主観でしかありません
ですから、高校に行って初めて、高校の雰囲気がわかることも多いのです。
もちろん、高校によっては体験入学の内容が異なりますので、すべてがすべてを体験出来るわけではありませんが、それでも、中学とは違う高校の先輩たち、学校の雰囲気、先生の指導方法、授業の内容、学校の施設、なにより高校自体の雰囲気などを知ることができますし、学校によっては在校生と会話したりすることができることもあります。
愛知県立高校の場合、
➀体験学習
②オリエンテーション
③校内見学
④部活見学、部活参加
⑤紹介ビデオ
⑥在校生との交流
などがあり、学校ごとに実施内容が異なります。
特に私立高校は生徒の集客(?)は文字通り「死活問題」。
そのため体験入学はかなり力を入れているため、中1から参加できたり(文房具くれたり)、日程が豊富だったりします。
私立高校は、
・進学実績(大学連携)
・ICT教育
・部活
・施設のきれいさ
・面倒見の良さ
をアピールして来ることが多いようです
2. 数字だけじゃない高校の姿がわかる
高校選びをする場合、塾に行っている子だと「偏差値」や模試の「合格率」を基準に、塾に行っていないご家庭の子だと、学校での「定期テストの点数や順位」を基準に学校を選びがちです。
しかし、忘れがちな視点は、高校というのは「同じような学力の子が集まる」場所であるということです。
たとえば今まで、そこまで頑張らなくてもテストで良い点を取れて順位も良かった、という子の場合、高校に入ったら、同じような成績を残すことは難しくなります。
なにせ、同じような成績の子が集まるわけですからね。
人と同じことをやっていたら、同じかそれ以下の成績になることだって普通にあります。
そういう時になって「なんで?」と悩む子もいます
高校生活は数字だけで選び、中学と同じ感じで行けると思ったら大間違いなので、そういう意味でも、数字以外の部分でその高校を選ぶ理由を作っておくことはとても大事です。
でないと、なんでここにいるんだろ?状態になりかねません
また、偏差値などの数字だけだと、その高校の「目指す学生像」のちがいによって生まれる校風が見えません。
たとえ同じ偏差値でも、校風によって、授業や進路指導、学校行事への考え方も異なります。
こういうことは数字で表れないことなので、ぜひとも自分の目で見てもらい、高校で説明が聞けたり、在校生と話ができるのであれば詳しく聞いた方がいいです。
また、もう少し上を目指せても、高校体験で「ここに通いたい」と本気で思える高校がある場合は、そこで上位にいる方が良い場合もあります。
かといって、下げすぎるのはあとあと後悔するのでほどほどに
また他にも、行ってみて初めてわかるものが、「通学時間」「部活や同好会の方向性」「在校生の姿」。
「いい高校」でも、片道1時間半もかかったら結構大変です。雨なら特に。
そのため、体験入学はぜひとも公共交通機関で行ってほしいです
高校の部活のレベルは、強豪校はケタ違いです。
練習について行けずに辞める子が多いので、高校で部活とどう向き合うかも大事な選ぶ要素です。
同じ「鉄道研究会」でも、電車の追っかけの場合もあれば、ジオラマ製作に力を入れていたりと、学校によって目指す姿が異なります!
ほかにも、文化祭などではちょっとはっちゃけた在校生の姿を見たりするかもしれませんが、来場者に対応する態度や備品の扱い方などからも読み取れることがありますので、そういった、数字だけじゃないものを見るための体験入学ということです。
3. モチベーションが上がる
高校に行くのはお子さん本人です。
高校の「名前」や「評判」「実績」「偏差値」などはあくまでも客観的評価に過ぎません。
たとえ「20名が国公立大学に進学」という実績があったとしても、その20人に入れるという保証はどこにもありません。
それよりも、その高校が、本人にとって何か「特別」なものを感じ取ることが出来れば、そちらの方が本人のやる気に強く影響を及ぼします。
自分事ですからね。
「子どもが勉強しない」というのは大概、自分事になっていないからですね
また、高校受験というのは、中学受験をしてきていない子にとって、初めての、人生の進路を決める1つの分岐点です。
高校だけで人生が決まるワケではないですが、出来るだけ自分にとって良い選択肢を選びたいという人たちとの、激しい競争があるのは事実です。
そんな競争に打ち勝つために大事になるのは、
「その学校に通える学力」
と、
「この高校に行きたい!」
という強い気持ちです。
中学生は、(本人的には違うでしょうけど)限界ギリギリまで勉強するなんてことはほとんどしていませんから、気持ち次第で学力が伸びる可能性があります。
ただし、それ相応のサポートと時間は必要です!
ですから、「どうしてもこの高校に行きたい!」と思える高校との出逢いで、そのモチベーションを強く持つことは、受験に勝つために必要な強い原動力となりえるのです。
人は伝聞や文書による外発的なモチベーションよりも、リアルな体験の方が内発的モチベーションが生まれやすいものです。
あの大谷翔平を支えているのも、内発的モチベーションです。
お金などの外発的モチベーションではありません。
高校体験はリアルな実体験ですから、そのモチベーションを生む、きっかけになりやすいのです。
実際寺子屋でも、ムリ目の志望校に行くために内申を5上げた子がいました。
本人のやる気次第で、未来は変えられるのです。
高校体験入学のポイントは?
上記のような理由で、偏差値や模試の結果をふまえての「行ける高校」選びもさることながら、今後の人生に大きな分岐点となる3年間を過ごす場所ですから、自分の目で見て、その高校の雰囲気や考え方、高校生活をいい方向にイメージできる高校を選んでいくことが重要です。
ここで、高校体験入学のポイントを簡単にまとめておきます。
そもそもどんな高校があるかもわからない?
通学圏内には数えるほどしか高校がない、という地域の場合はよいのですが、名古屋市のような都市部近郊では、通学圏内にかなりの高校があり、高校選びも一苦労です。
だからこその高校体験入学ですが、すべての高校に行く時間もないでしょう。
全然受験モードになっていない子や志望校のカケラも決まらない中学3年生、中学1、2年生であれば、公立の体験入学には参加できませんので、色んな学校が集う「合同説明会」に行く事をオススメします。
愛知県だと、2022年度から始まった「愛知県立高校進学フェア」というのがあります。
今年は地域ごとに会場が用意されており、服装も自由で(ニュースを見る限り制服の子もいたが)、どの学年の子でも参加できる上、学校の先生から説明も聞けるため、「全然高校決まらん」という人は親子で参加しましょう!
-
https://aichi-kenritsukoukou-singakufair.jp/
aichi-kenritsukoukou-singakufair.jp
ただし、名古屋市立の高校は参加していませんので注意!
(国立名古屋大学教育学部附属高は参加)
ちなみに私立高校の同様の合同説明会は、愛知県私学協会主催の「私立学校展」や、愛知県私塾協同組合主催の「高校入試説明会」というのがあります。
合同説明会は、夏休みの8月実施が多いですが、会場によっては6月開催だったり、事前申し込みが7/1だったりですので、少しでも興味があれば早め早めに準備してもらいたいですね。
体験入学は何校行けばいい?
体験入学は「一人何校まで」という上限はないですが、かといって何十校も行けるほど時間的に余裕はありませんよね?
ですから、校数を絞って行く形になるのが基本です。
愛知県の場合は、私立高が最大3校、公立高が最大2校受験可能なので、最低でもその5校くらいは行っておけるといいです。
そして、公立が本命であれば、上限はありませんが現実的に、志望校+1~3校くらいでしょうか?
目指す高校のレベルや、通学圏内の高校にしぼると、そこまでない、という場合もあるかもしれませんが、できるだけ色んなパターンの高校を選ぶのがオススメです。
「愛知全県模試」などで偏差値がわかっている場合、現状の偏差値で行ける所、その少し上、少し下の高校の最低3校は見ておくとよいでしょう。
とくに愛知県の公立受験は、全国で唯一2校受験できるため、第2志望校選びもとても大切です。
偏差値が自分の偏差値より高い高校であろうが、本人が「どうしても行きたい!」と思えばそのために受験勉強を必死になることもあります。
愛知全県模試の合格判定が低くても、目標とする高校のために努力して、結果的に志望校に行けた、という子もいます。
とはいえ、受験は結果がどうなるかわからないものです。
そういう意味で、今の自分の成績なら余裕で合格しそうな高校でも、いろいろと見学しておくべきです。
「不本意な」結果で行く高校ほど、できるだけ不満のない高校に行くべきです
公立志望でも、先に実施する私立高校の合否次第で、公立で受験する高校を変更せざるを得ない場合もゼロではありません。
極端な話、公立志望で、すべり止めの私立が全滅だった場合、公立の第2志望はかなりの安全校に変更せざるを得ません
ですから、子どもが「第1志望しか眼中にない」と言っていたとしても、親御さんは他の高校も見ておく大事さを伝えることが必要です。
なぜなら、通ってもいない高校が、その子にとって本当にいい高校であるという保証もどこにもないですし、意外と「行ったらよかった」という高校も結構あるものです。
また、「偏差値がわからない」「そもそもどこを選べばいいかわからない」というのであれば、普通科だけとしぼらず、色んな専門学科や総合学科の高校を見ておくのもよいでしょう。
もし、勉強が好きじゃない子なら、男女関係なく、商業系と工業系は1校ずつ見てもよいと思います
今は、専門学科からでもそのまま就職、という高校ばかりではなく、専門学校や大学に進学する子もかなりいます。
あまり固定観念を持たず、現実的に通学できる範囲で、高校を選びたいですね。
数字よりも「自分には合う」という高校に行った方が、学力が上がることもあります
申し込みや行く時の注意点は?
私立と公立でまったく異なりますが、私立は基本的に各高校のWebサイトから申し込むのが一般的です。
対象となる学年は、公立は中3のみ。
私立は中1~3としている場合もありますが、そうでない場合もあるので、その辺はちゃんと確認しておきましょう。
また、私立の場合は、同日もしくは別日で「説明会」を実施していたりします。
私立の説明会は10月とか11月とかでもやってます!
説明会は基本、保護者向けの内容ですが、いろいろ質問ができたりするので、どれくらいの内申が必要かとか、どんな対策が必要かとか、大学連携の話とか、授業料免除の成績とか、そういったことを聞くことができます。
学校によって教えてくれる内容が異なります!
公立は、愛知県の場合、学校からの一括申し込みのみとなります。
そのため、前述しましたが、愛知県や名古屋市などから出されている、体験入学のリストに書かれている〆切よりもかなり早く締め切られるそうなので、とにかく、少しでも迷うくらいなら、申し込んでおいた方がいいでしょう。
本当に厳しすぎるくらい〆切が早いです!
また、よく聞くのが、高校に行く時の「格好」ですが、中学生は基本学生服(公立は必須)、大人はラフすぎなければ、という感じです。
バリッとスーツを着こなして・・・なんてのは必要ありませんので、オフィスカジュアルみたいな感じですかね。
高校にいたらおかしい格好は避けて、というところでしょう。
こちらもCHECK
-
2023年度愛知県の公立高校・私立高校の体験入学の日程まとめ
例年通り、愛知県教育委員会と名古屋市教育委員会から、愛知県立高校と名古屋市立高校(つまり公立高校)の体験入学の日程が別々に発表されました。 ほとんどの中学3年生は、まだまだ受験モードになっていない時期 ...
続きを見る