今年の中3の子が受験する、「令和5年度 愛知県公立高校入試」からルールが大幅に変わる、ということをさんざん言っていましたが、
今回は、愛知県教育委員会から発表された、公立高受験の一般入試での合格者を決める「校内順位決定方式」の仕組みと前年度までからの変更点をわかりやすく解説していきます。
専門用語が入り乱れますが、できるだけわかりやすく書いていきますね。
「校内順位決定方式」とは?
「校内順位決定方式」とは、
愛知県の公立(愛知県立・名古屋市立)の高校を一般受験した際に、「評定得点」と「学力検査合計点」の合計点で順位を決める方式です。
「評定得点」というのは、
「調査書(内申書)」の評定合計(=9教科5段階評価の合計、通称「内申点(の合計)」)を2倍したものです。
「学力検査合計得点」というのは、
いわゆる入試本番のテストの得点です。通称「当日点」と言われていますね。
つまり、
合計点の基本的計算ルール
内申点×2+当日点=合計点
となるわけですね。
当然、点数が高い方が合格する確率が高くなるので、内申点、当日点がそれぞれ高ければそれだけ有利です。
もちろん、逆もあり得ます。
つまり、両方大事!というわけですね。
公立高受験はいつの内申点を見るの?
注意ポイント
本来、「内申点」というのは、通知表における5段階そのもので、「9教科×5段階」は「評定合計」と言いますが、ここではわかりやすくするために「内申合計=評定合計」としています。
受験に使われる内申というのは通常、通知表に書かれた9教科×5段階の合計の数字(最高45点)を示します。
私立高校入試だと「2学期まで」というの基本ですね。
それが、愛知県の公立高入試の場合だと「3学期(=年間成績)」と言われています。
正確なことを知りたいので、愛知県教育委員会に直接確認したところ、
教育委員会としては、毎年11月頃に愛知県教育委員会が発表する「入学者選抜実施要項」に、調査書に記載の日以降に作って下さい(下図)とはしているが、いつの成績にして下さいとは指定していない
・・・という返答をもらったので、学校により異なる場合もあるということですね。
(評定は学期途中でもつけられるので)
特に、今年から入試の日程が早くなります。
調査書を提出する日も早まる可能性もあり、3学期の通知表と内申が異なる可能性もありえます。
ただ、生徒側にはわかりえないので、「内申はだいたい3学期の通知票の内容と同じ」と考えるしかないでしょうね。
校内順位決定方式は3パターンから5パターンに!
なお、この校内順位決定方式は、先ほど紹介した、
合計点の基本的計算ルール
内申点×2+当日点=合計点
を基本の形(Ⅰ)として、
これまでは
内申点を重視(x1.5)する(Ⅱ)や、
当日点を重視(x1.5)する(Ⅲ)の
3つのパターンがありました。
それが、今回の変更で、
さらに内申点を重視(x2)した(Ⅳ)や、
さらに当日点を重視(x2)した(Ⅴ)の、
計5つに増えたんです。
なお、このⅠ~Ⅴを選択するのは各高校の裁量にまかされており、
それぞれのパターンの計算方式で出した合計点を「基礎資料」として、合格者の順位を決めるということですね。
合計点だけで決まらない!?
ナゾのワード「基礎資料」
この合計点、教育委員会の定めたルールでは、あくまでも「基礎資料」という位置づけです。
合計点だけで合格かどうかは決まらないんですね。
たとえば合計点で「同点」だったらどうなると思います?
ましてそれが、定員ギリギリの順位だったとして、同点が3人も4人もいたらどうなるのか?
そこで「差」をつけるために使われるのが、中学から各高校に提出された「調査書(通称「内申書」)」。
この、内申書の内容で、特筆すべき事があれば、順位をつけやすいですよね?
実際、去年までは、「内申と当日点が合格範囲」というグループ(A)と「内申か当日のどっちかだけ合格範囲」というグループ(B)を分け、Bの子たちに対して、Ⅰ~Ⅲまでの計算式で算出した合計点と、内申書の内容を踏まえて順位をつけるという、死ぬほどわかりにくい仕組みでした。
今年からはそれが、そのA・Bの切り分けはなくし、
各高校内で採点し、
「合計点+内申書」の内容を踏まえて、
再度順位を並び替えてもらい、
それを愛知県のコンピュータ※に入力して、
合格か不合格かを出す、
という非常に単純明快な仕組みに変更されました。
コンピュータが決める?
愛知県の公立一般入試では2校受験する子がほとんどなので、たとえば、α高とβ高の2校とも合格順位になったとしても、第1志望のα高が合格順位になっていた場合、β高校は他の子がくり上がる処理を行うため。
つまり、「合計点」はあくまで選ぶための「基準」となるもの(だから基礎資料)。
そして、プラスアルファとして、
内申書の内容に特筆すべき事があれば、それを考慮したりすることもあるよ、ということですね。
注意ポイント
教育委員会はこれを「各高校が総合的に判断する」としているので、「英検」「委員会」「部活」などがどのように評価されるかは学校によって判断が異なるということです。ただ、ポイントアップではなさそう。
そういう意味で、教科以外の活動を頑張ることで必ずしも「内申点が上がる」とは言えませんが、「内申書の価値が上がり、順位が上がる」とは言えるので、いろんなことを積極的に取り組んだ生徒の方が有利、というのは言えると思います。
いずれにせよ、今年の入試から、合計点+内申書の内容で合格順位が決まる、ということですので、自分の志望する高校がどの方式を選択しているのか、今まで以上にしっかりチェックしておく必要があります。
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それぞれの式で合計点はどうなる?
それではここからは、Ⅰ~Ⅴのパターンで、実際の「合計点」がどんな感じになるか見くらべてもらうため、それぞれ内申や当日点の異なる3人を設定しました。
常にオール満点の「マンテンさん」
一人目は、最高得点をわかりやすくするために設定した、「マンテンさん」。
勉強も運動もすべて完璧、授業態度もよいため、内申はオール5の45点。
高校での飛び級で大学入学の準備をしているだけあって、当日点は余裕の110点満点。
意外と勉強に苦戦の「ナイシンちゃん」
二人目は、マジメなのに思ったより成績が伸びない「ナイシンちゃん」。
授業はマジメ、提出物もちゃんと出しているが、苦手教科が多く、内申合計は30点。
塾にも行っておらず、本番にも弱いので、当日点の合計は50点でした。
ただ、委員会なども積極的で、週末はボランティア活動をしています。
授業×でもテスト○な「トウジツくん」
三人目は、フマジメだけど意外とテストは悪くない「トウジツくん」。
テストはまあまあだけど、提出物や授業態度がいい加減なため、内申点の合計は25点。
ただ、塾の受験対策講座を受講していたおかげか、当日点の合計は60点。
・・・この3人の点数が、それぞれの方式でどうなるのかというのを、今年から追加された方式もふくめ、5パターンで点数がどうなるのか見ていきましょう。
注意ポイント
実際にはマンテンさんのような成績の子が、他の二人と競う高校を受験することはあまりないのですが、最高得点をわかりやすくするために入れてます。
パターンⅠ「均等型」
これは、最初にあげた基本のパターンそのものですね。
内申点を2倍して、当日点と合算します。
Ⅰ均等型
内申点×2+当日点=合計点
中学校での評価と、当日のテストを「均等」に評価する、という方式です。
それでは、3人の点数がどうなるのか比較をしてみましょう。
マンテンさんの数字が「最高点」ですね。
これは別格として、ナイシンちゃんとトウジツくんが、両者とも110点で同点になりました。
とはいえこれでは合格者の順位(場合によっては合格か不合格かのライン)が決められませんね。
そこで、先ほど述べた、「合計点である基礎資料をもとに総合的に判断」というのが利いてくるわけですね。
「学習態度」がよくないトウジツくんよりも、色々やっているナイシンちゃんの方がよい書き方をされている可能性があり、ナイシンちゃんの方が順位が上になるかもしれません。
順位が1番2番違うだけならよいですが、もしこれが合格者の最後の1人だった場合は致命的ですね。
そのためにも、トウジツくんは日ごろから中学校でもちゃんと取り組む必要があるのです。
パターンⅡ「内申重視型」
2つめのパターンは、内申点を重く見たいという高校が採用する方式で、内申点を2倍した後、さらに1.5倍します。
Ⅱ内申重視
内申点×2×1.5+当日点=合計点
これを、さっきの3人に当てはめると、このように変化します。
最高点はマンテンさんの245点ですね。
あとの二人は今回は差が出て、ナイシンちゃんが140点、トウジツくんが135点になりました。
トウジツくんに比べてナイシンちゃんが+5点分リードとなりました。
もし合格ボーダー※が137点の場合、ナイシンちゃんは合格、トウジツくんは不合格、ということになりますね。
注意ポイント
よく「ボーダーライン」の点数という数字が出てきますが、高校側にそういったものは存在せず、だいたいいつもこれくらいの点数までの子が受かる、という参考値です。上記の例だと、137点が合格者の最後だった、という意味使っています。
この方式は、「テスト」があまり得意でない子でもいいよ、という評価方法です。
ですから基本的に、「5教科」よりも「技術」を学ぶ専門学科の高校の方が採用が多く※、普通科での採用はかなり限られます。
注意ポイント
とはいえ、専門学科で一番多いのは「Ⅰ」の均等タイプで、全体の半数近くの46.8%が採用。Ⅱは22.8%。
専門学科では、5教科よりも「授業をマジメに聴く」「提出物をちゃんと出す」という学習態度を踏まえて、「この子はウチに来て成長が見込めるな」という子を選ぶ学校もあるからでしょう。
パターンⅢ「当日重視型」
3つめのパターンは、Ⅱと逆で、当日点を1.5倍する方法です。
Ⅲ当日重視
内申点×2+当日点×1.5=合計点
当日点の価値を上げるので、勉強(テスト)が出来る子向けの方式です。
最高得点はマンテンさんの310点。
あとの二人は今度は逆転し、ナイシンちゃんが135点、トウジツくんが140点になりました。
今度はトウジツくんの方が+5点有利ですね。
トウジツくんのように、5教科のテストに強い子には有利ですが、5教科が弱い子には不利な方式です。
この方式は勉強が出来る子向けなので、ほとんどが普通科での採用です。
その中でも特に学力(偏差値)が高い高校は一様にこの方式をこれまでは採用しておりました。
が、およそ半数が、後で紹介する「Ⅴ内申超重視」変わっています。
パターンⅣ「内申超重視型」<New>
今度の入試から追加された方式で、
Ⅱよりも内申点をさらに高く評価し、内申を2×2の4倍にする方法です。
Ⅳ内申超重視
内申点×2×2+当日点=合計点
Ⅱよりさらに内申を重視(つまり"超"重視)したので、当然のことながら専門学科向けの方式です。
最高点はマンテンさんの290点。
残りの二人は、ナイシンちゃんが170点、トウジツくんが160点になります。
内申超重視なのでナイシンちゃんの方が+10点も有利ですね。この差は決定的です。
たとえばボーダーが165点あたりだったら、トウジツくんはいくら生徒会活動などでいい内申書になろうと、合格するのは不可能だと思います。
「Ⅳ」の高校に行きたかったら、とにかく内申、というわけです。
にしても、内申が最高180点:当日が最高110点って配分、極端すぎですよね?
じゃぁ、本番のテスト頑張らなくなるんじゃ・・・という心配からか、採用する高校が最も少ない方式です(普通科は愛知県全部で1校のみ)。
パターンⅤ「当日超重視型」<New>
最後の「V」も今度の入試から追加された方式で、Ⅲよりも当日点をさらに高く評価し、1.5倍ではなく2倍にする方法です。
Ⅴ当日超重視型
内申点×2+当日点×2=合計点
こちらはⅣと逆に、Ⅲよりさらに当日点を重視(つまり"超"重視)したので、当然のことながら普通科向けの方式です。
最高点はマンテンさんの310点。
残りの二人は、ナイシンちゃんが160点、トウジツくんが170点になります。
トウジツくんの方が+10点有利ですね。
10点も差がつくとナイシンちゃんにはかなり苦しい展開です。
この「当日超重視」は、ただでさえ当日有利な比率「9:11」を、「内申9:当日22」という比率にするので、
完全に「テストの実力」で評価したいという偏差値の高めな高校が採用しています。
逆に言うと、当日点稼げなかったらほぼ終わり、という厳しい世界です。
そのため、この方式の場合、かなりしっかりとした当日点対策をしないと、いくら内申を頑張っても、「それじゃ足りない」という結果となるかもしれません。
注意ポイント
塾に行っていない子は、過去問だけでなく、全県模試などを受験して受験慣れしておくことも必要です。
しかしそんな厳しい条件にも関わらず、
普通科ではもっとも多い採用方式で、尾張エリアは約4割、三河は約3割の高校が採用しており、意外と採用校が多い現実があります。
(尾張エリアの採用校は下記)
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選択肢が増えた?ややこしくなった?
以上、3つから5つになった順位決めの計算パターンをご紹介してきました。
今までより、より志望する高校によって評価の基準がガラッと変わってしまう、
というのがよくわかってもらえたかなと思います。
これはそれぞれの高校が選択したことなので、
受験する側は、こういった事も含めて総合的に高校を選ぶ時代が始まったと言えるかもしれません。
推薦の方法も複数登場したりしていますし、
これまでのように「偏差値」だけを基準とするのではなく※、
色々な情報を元に「総合的に」判断する、ということですが、
そのためには「情報」をしっかりと整理して、何が自分に合うか、何が自分に必要なのかを自分で考えないといけない、というわけですね。
注意ポイント
理想としては「脱偏差値」だけど、実際は思ったほど普通科で特色選抜が少ないなど現実的な課題もあるので、その辺、うまいこと情報を整理して選ぶ必要があります。
さまざまな選択肢が増えるということはよいことですが、
それは逆に、特に行きたい高校が決まっていない子の場合、
どれを選んだら良いのかわりかにくい時代になった、ということでもあります。
これって、塾側からしたら「歓迎」な制度変更かもしれませんね。
たいがいの人は「よくわからない」となってしまって、塾を頼らざるを得なくなるわけですからね(塾も大変ですが)。
特に、「V」の当日点超重視になったところは、
今まで以上に「当日点対策」の有無で結果が大きく分かれることになります。
ですから上位校では競争がさらに激化するので、塾に行っている子にとっては有利に働くのではないかなと思います。
このあたりはまた別の記事でご紹介できたらと思います。
まとめ
いずれのパターンを選択するにしろ、それぞれの比率は違うにしろ、やっぱり「内申点」も大事ってことです。
たとえば「V」だと、内申9:当日22という比率なので、
「当日点で逆転できるからいいや」
と内申点をおろそかにしていたらどうなるでしょう?
そもそも「V」を選択する高校は進学校が多く、
そういう学校に行く子が、内申をおろそかにする子ばかりなハズがなく、
当日点で逆転できると考えたところで、
結果的に「内申点の差」で負けた、
合計点は同じだけど「内申書の内容」で負けた、
・・・ということだって起こりうることです。
つまるところ受験は「競争」なので、
「あとで追い抜けるからいいや」
と童話『ウサギとカメ』のウサギさんのような考えでいたら、
コツコツ内申を積み上げて、コツコツ当日点対策もしてたカメさんには敵わないかもしれないわけです。
ですからやっぱり「内申点」も「当日点」も両方大事!ということです。
当日点なんてアテになりませんからね!
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