まだ終わっていない塾さんもありますが、鳥羽見寺子屋では先週末の日曜日(コミュニティセンターが静かなので大概日曜日に実施)に、愛知県下最大の高校入試模試である「愛知全県模試」を実施しました。
今年は昨年と違って寺子屋での受験生が少ないこともあって人数が少なめですが、塾に行っていないけど毎回模試だけ受けに来る子もいます。
私自身、中学生のときにそうでしたが、「塾に行くほど困ってない」成績で、経済的にもさほど裕福でもないし、親も別に塾に入れたいと思っていないという家庭だったので塾にも行かず「フツー」に勉強していましたが、特に公立高入試をする場合は、模試は受けた方がいいですね。
特に全県模試は愛知県公立入試問題ソックリに作られていますから。
当日問題を見て「なんじゃこりゃ?」となって、内申的にはぜんぜん安全校に下げた上で受験した公立高校を落ちた私の経験上の話。
なお、寺子屋では、模試修了後に「解答&解説」を渡して、希望者には「見直しタイム」で会場に残って、解答解説を見ながら自分の解答を見直ししてもらつつ、自己採点をしてもらい、特に数学のような、文章だけではわかりにくい解説が必要なものを、画面を使って解説したりしています。
さっきお話しした、塾にも行っていない子(A君とします)は寺子屋から離れているエリアにお住まいなので、特に「後で聞けない」ということもあるので、毎回見直しタイムに参加していきます。
見直しタイムでは、苦手な数学で、難しい問題の解き方がさっぱりわからなかったということなので、解答解説のように文章ではわかりにくいものを、「図で考える」方法で説明してあげたりしました。
なお、寺子屋で受験した子は模試の後とか、普段の勉強会で解説が聞けるからいいのですけど、全県模試さんは「自宅受験」というのをしていたりするので、数学の難問くらいは解説を動画とかにしてくれると自宅模試をしている子も助かると思いましたね。
もともとは「塾」用のものなので、それぞれの塾で解説できるから、ということでそういうものがないのだと思いますが、今後そういう風になっていってくれるとよいなと。
ただ、この「解答解説AXIS」には、親切にもどの問題が各教科書の何ページに出てくる内容か、という風に書いてありますので、今のところはこの辺を見ながら、(一か月くらい後の)結果がくるのを待たず、苦手な単元を復習してもらうことが大事ですね。
高校受験に必要なのは、学力だけではない
模試も入試も、基本的に「落とすため?」と思うような、難易度の高い問題が含まれています。
それは、愛知県はどのレベルの高校でも、公立高校であれば同じ問題を使う、というシステムがあるからです。
公立入試の問題の種類
大阪府のように、難易度の異なるA・B・Cの問題を学校が選択するところもある。
愛知県はこれまでA・Bと2パターンの問題があったが、日程が違うだけで難易度は同じで、今年からは1パターンになる。
なので、特に数学では普通のレベルの子では「絶対解けないでしょ!」とか、勉強が出来る子でも「初見では時間が足りない!」という問題も、よく見られます(入試では平均点も数学だけかなり低い)。
だからといって、安易に「できない問題を捨てる」とできないケースもあります。
たとえば、自分の内申点と偏差値では志望校の合格ライン付近とかいうケースです。
その場合、「できない問題を捨てる」という「戦術」をとっていたがために、「捨てた問題」で合否の明暗を分ける、ということだって起こりうるわけです。
特に模試や過去問などを使って「目標点」を設定して、それを達成するようにした訓練をしていないと、「これも捨て」「あれも捨て」とやっていたら、何も点数が残らない・・・といったことだってあります。
勉強が嫌いな子ほど、それが顕著ですね。
「捨てる」なら何を捨てるか、その分をどこで補うか?
これを、中学生が一人で考えられるのであれば、その子はそもそもかなり成績がいいでしょう(内申は40を越すと思います)。
だから基本的には大人がそれを指導してあげないといけません。
どの教科で何点とって、どのような問題で点数を取って、どのような問題に「チャレンジ」して、どのような問題を「捨てる」のか。
必要なのは、言い方は悪いですが、「テストのための勉強」です。
高校入試に必要なのは、「戦略」と「戦術」
しかし、「人間教育」を主目的に置いている公立の中学校ではそういうのを嫌うので、まず指導しないでしょう。
逆に塾はそれを推し進める場所ですので、塾教材会社の作っている「公立入試模擬テスト」をやったりすることもあります。
私自身は「勉強のための勉強は、勉強とは言えない」と思っているので、そういうのがあまり好きではありませんが、現実がそうである以上、対策できることはしてあげたいので、去年の受験生達には、模擬テストで「点数を確実に稼ぐ」練習をしてもらいました。
入試に必要なのは「学力」+「戦略」と「戦術」です。
私自身は「学力」しかなかったので、見事に玉砕してしまいましたが、子どもたちに同じ経験はさせたくありません。
基本的に塾って、子どもに費用を結構かけられる、学力的には中間から上の子を対象としていることが多いと思うのですが、塾よりも教育費が低くて済む寺子屋はどっちかというと中間より下くらいの子が多いので、寺子屋では、より現実的な、「生存競争に生き残るため」に「戦略」を考え、「戦術」を実行させるようにしているわけですね。
あのイチローだって言っている
そんなわけで、数学の解説を聞いたAくんには、本人の学力も踏まえ「この問題は解けるようになった方がいいね」とか「この問題はすぐには解けないので、類題とかに慣れないと厳しいね」という話をしてあげました。
本人も、「これなら確かにとっておくべきだった」とか「この問題は手も足も出ない」とか判断することの大切さをわかってくれたので、後はその辺を意識してトレーニングしていくことが大事ですね。
とにかく、入試には時間制限があるので、練習で「やってみてダメだった」のと、本番で「やってみてダメだった」は違いますからね。
過去問や演習問題をやりながら「やってみてダメだった」ものが、本番までに「やってみたらできる」にできるのか、本番では「やってみてダメだと判断したら捨てる」とできるのか、そういった判断力を付けていくことも大切です。
ただただ勉強するだけでどうにかなるなら、そんな楽な世界はないですからね。
でもそういうのって、人生にも言えますよね。
かのイチローも、
やってみて「ダメだ」とわかったことと、
はじめから「ダメだ」と言われたことは、違います
と言っていますし、練習ではなく本番であれば、難しそうな問題をやってみて「あ、これは行ける!」と判断できるなら挑戦すればいいし、「あ、これはこれ以上できない」と判断できるなら捨てればいい。
試行錯誤をしたからこそたどり着けるものがあるわけですし。
そういう生存戦略を学ぶ事も、こういった「テストのためのテスト」から学べることでもあります。
そして、有名企業が有名大学卒業の子を採用する、勉強が出来る子が仕事が出来るというのも、実はこういう頭の中での「処理」が無意識レベルで出来るからです。
同じことをしても、頭の中での働きが違うから、仕事の結果も違うわけですね。
もちろん今は学歴だけでなく、勉強以外のことでそういう能力を発揮してきたらそれは評価される時代になったとはいえ、誰もが通る受験だからこそ、そこでの取り組み方でも差が出てくるよ、ということですね。
そういう意味で、「勉強しても意味がない」という子どももいますけど、実際には意味はありますし、勉強や、勉強にまつわる受験などでも、人の能力は磨かれていくワケなので、できることはやらないといけないし、やった方が後悔がないよといいたいですね。
だから、もっと多くの子に模試を受けてほしいですよね。
もちろん、ただただ「受けた」だけではダメなのですけど、それでも、まったく未体験で本番に向かうよりはずっといい。
やっぱり受験の本質は「競争」なので、どこかで差をつける何かが必要ですし、かといってそれを親御さんの経済力だけで差がつくようにはしたくありませんしね。
結局、お金がかかることではあるのですが、塾に行くほどお金をかけずとも、できることはありますので。
「戦略」と「戦術」についてはまた話ができたらなと思います。