寺子屋特別授業 学びお役立ち情報

「都道府県」しっかりおぼえないと、後が大変ですよ!

昨日の15時からの特別授業は、都道府県マスター中級編でした。

といっても、毎年やっている都道府県マスターなので、参加者も「また来たの?」という子も笑。

寺子屋は子どもに寄りそう学習支援をする場所なので、画一的なフォーマットを「押しつける」ことはせず、授業形式の場合、子どもたちの状態に合わせて授業内容を変えています。

そのため、今回の中級編は「名産」を中心にやる回でしたが、みんな小5でしたし、「参加する意味ある?」くらい知っている子もいれば、中には都道府県や地方名もおぼえていない子もいましたので、クイズ形式で都道府県と県庁所在地を答えておぼえてないものをおぼえてもらいつつ※、各都道府県の名産品などを今回は数字のデータを用いて解説しました。
※一気に全部おぼえても忘れるので、記憶に残りやすいようにする工夫を入れます

都道府県を「データ」で見る

小5くらいになると、算数の「割合」を本格的に学ぶ(そして大概の子がつまずく)年でもありますから、身近なところから、割合を効果的に使って解説しました。

たとえば、北海道といえばジャガイモやタマネギで有名ですが、それが「どれくらい」なのかというのを知るのに、割合があるとより記憶に残りやすくなります。

タマネギ・ジャガイモ・ニンジンの組み合わせは、子どもたちが好きなカレーやシチューの材料ですが、数字の割合で見ると、それらがいかに北海道に依存しているのかというのがよくわかり、「ロシアに北海道を獲られたらカレーが食べられなくなる」という時事ネタも入るとよけいイメージが湧きますね。

 

他にも、「青森=リンゴ」だけど、どれくらいのシェアを青森が占めているのかとか、「シナノゴールド」や「シナノスイート」というリンゴ品種のある長野が2位だけど、一体どれくらいなのかとか、それ以外の産地のものをほとんど見ないのはなぜなのかとか、そういう所に着目すれば、より「○○県=△△」というようなことが残りやすくなります。

中には、イチゴのように「2位」との差がそんなにないもの、というのもあります。

イチゴが1位なのは「とちおとめ」と生みだした栃木ですが(だから「とち」)、とちおとめに対抗して作った「あまおう」を作った福岡が2位で、この二県は昔からトップを争い、福岡に負けた栃木が「とちおとめ」を生み出した、というドラマもあります。

 

とはいえ、「○○県=△△」というようなパターン化された思考だけだと、先入観だけで失敗することもあります。

たとえば「高知=カツオ」というイメージが強いですが、実際に鰹の漁獲高ではトップ3にも入っていません(消費はトップ)。

カツオうんちくコラム -土佐のカツオ辞典

このサイトは、高知のカツオ愛をもっともっと高めるために作られた、「高知人 の高知人による高知人のための」うんちく辞典なのです。

これを、「カツオの一本釣り」の割合と、「消費量」が段違いというところから来ている、ということを理解できておくと、都道府県上級者ですね。

 

中学・高校受験の地理では「知識+思考力」型の問題になる!

小学校くらいだと別に丸暗記で「高知=カツオ」でもいいのですが、中学生になると、そうもいきません。

なぜなら、今の文科省の方針としては、AI時代ということもあって、スマホですぐにわかる「知識」を問う問題ではなく、AIにできない「思考力」を問う問題が解けるような人間になってほしい、となっていますから、今の中学以降の社会科地理では、複数の資料を元にして「正しいデータの読み取り」をさせる問題がかなり多いです

それを、データに基づかず、「○○県=△△」という先入観で答えようとしても失敗することもあるわけです。

特に公立高校入試の場合※、内申オール5の受験者も内申オール2の受験者も同じテストを受けるだけあって、「丸暗記」で解ける問題は出てきません(私立の場合は丸暗記で行ける所もあります)。

都道府県の問題も、一ひねり二ひねり入れてある問題ばかりで、選択肢も多いです。

たとえばこちらは実際の愛知県の公立高校入試(2020年度B日程)の社会科の問題です。

(愛知県令和2年学力検査 全日制過程B社会 大問3より)

表中のX~Zに静岡・奈良・三重のいずれかがあてはまるのですが、それをあてはめた上で、それを踏まえて、下の6つの説明文から、正しいものを一つだけ選べ、という問題です。

問題の作り自体もややこしくてしょうがないですね!

そもそも、「日本三大人工林」なんて、大人でもほとんどの人が知らないことで、そんな風にまとめて並ぶことがない都道府県のグループですが、それを、正しく分類しないといけません。

しかも、データの項目自体も、「漁業生産量」「国宝・重要文化財(=重文)物件」ならまだしも、学校で「宿泊旅行者数」を学ぶことはおそらくなく、知らないことを、与えられた表(時にはグラフ)のデータと説明文(偽物もアリ)から、どれがどの県か当てはめつつ、複数ある選択肢の中から、たった一つの正解に絞り込んでいく必要があります。
(こういう問題があるので受験は「過去問」対策が重要)

苦手な子ならカンで答えるヤツですが、正解するためには、都道府県について「知っている」情報が多くないといけません

(愛知県令和2年学力検査 全日制過程B社会 大問3の2より)

Xは、「国宝・重文の件数」の圧倒的な数と、漁業生産量の少なさから海に面していない「奈良県」というのがわかりますね。
ただ、奈良県がどこかわからない子(いるんですよ!)だと、そこすら読み取れないかもしれません。歴史的な建物が多い割に「宿泊旅行者数」が少ないので、「ホントに奈良県か?」と疑ったりすることもありえますね(時間のロスです)。

YとZは「漁業生産量」「国宝・重文の件数」が拮抗していますが、紙関連の出荷と宿泊旅行者で違いがありますね。

この辺、静岡は「富士山」「伊豆」「浜名湖」という大観光地が多いこと、東海道新幹線や東名高速、飛行場もあって全国から人が集まること、横長の土地で大都市から距離があり日帰り観光はちょっと厳しいこともあって、宿泊者数が多いからなんですが※、静岡県と三重県が客観的にどういう県かということを知っておかないと、「いや、三重だって伊勢神宮あって、志摩スペイン村あって、鈴鹿サーキットもあるし」と迷ってしまいます。まぁ、富士山というコンテンツには敵わないですから、静岡じゃないかな、と当たりはつけられますが、そういうことができない子もいますからね。
※調べたら大都市から日帰りで行ける京都よりも宿泊者数が多い

これが、「漁業生産量」に引っ張られてしまうと、遠洋漁業で有名な静岡県の「焼津港」があるから、単純にZ=静岡としてしまいがちですが、実は大きな港こそないものの、志摩地方で養殖の盛んな三重は漁業生産量は静岡を上回るので、Z=三重県で、静岡はYとなります。

(愛知県令和2年学力検査 全日制過程B社会 大問3の2より)

そうなるとこの問題の答えは「オ」だ、ということがわかるわけですね。

(アもそれっぽいのですが、出荷額は静岡だけど事業所が奈良なので、その辺の「産業構造」を理解してないと引っかかります)

 

都道府県は、関連付けておぼえることが大事

あとは、SNSや新聞やテレビのニュース、情報バラエティを見ておくというのも大事です。

たとえば、歴史的建造物が多い(世界遺産の数は日本一)奈良県が、実は日帰り客ばかりで宿泊客室ワーストで、鹿が横断歩道を渡る「泊まれ」ポスターがバズったというニュースを見たことがあれば、「歴史的建造物が多いのに宿泊者が少ないってホントに奈良県?」という疑念はわかなくなりますね。「みんな京都に泊まるもんね」となりますから。

2年半ぶり2度目のブレイク 奈良に「泊まれ」の鹿ポスター 実は“前向きな思い”の結集(Hint-Pot) - Yahoo!ニュース

 横断歩道を渡る3頭のシカ、そして道路には「止まれ」ならぬ「泊まれ」の文字。ネット上では先日、1枚のポスターが大きな話題を呼びました。シカ、歴史の教科書に登場するレベルの有名な神社仏閣、豊かな自然が

静岡県(富士市・富士宮市)の紙業についても、紙を作るには「綺麗な水」が必要だから、ミネラルウォーターをたくさん出している富士山麓の町がある静岡県は紙業がさかんと考えられるし、「紙の町のメーカーが紙のストローを作った」というニュースを知っていれば、「静岡県=紙業」という風にすぐに答えを導き出すことができます。

静岡)「紙のまち」から紙ストロー、海洋汚染に配慮:朝日新聞デジタル

 プラスチックによる海洋汚染問題が深刻化する中、「紙のまち」静岡県富士市の製紙業者が独自の技術で開発した紙ストローの製造を始めた。企業でも環境意識が高まっており、今後の需要増を見込んでいる。 この業者…

このように、都道府県にまつわる「情報」への感度が高ければ高いほど、こういった問題の正答率も上がる、というわけです。

 

こういった問題を見て、解説を聞くとたいがいの子が「言われてみれば確かに」ということになるのですが、いざ、テスト本番で、この問題一つにずっと考え続けるわけにもいきません。別に配点が高い問題でもないですし。かといって、選択肢の多い選択問題の正答率は低くなるので、絞り込むにしてもある程度絞り込まないといけないわけです。

都道府県の知識があることが前提の上で、さらに考えさせる問題が作られているので、都道府県についてできるだけ情報を知っておく必要があるし、知らないものは、与えられた情報の中から「考える」「想像する」という作業も必要になります。

都道府県の「名前」も「位置」もわからないとなると、絞り込みが甘いので「カン」の正解率も下がり、勝負になりません。

今年度から公立高入試の問題がマークシートになりますが、記述に頼らず思考力を見るためには、こういう問題はむしろもっと増えていくでしょう

これを、中3の受験モードになってから、一気におぼえようとするのは至難の業です。

おぼえているこは先に進んでいますし、やはり、小学生の内に、都道府県についての名前はもちろん、どういった所で、それがなぜか、ということをできるだけたくさん知っておく必要があるんですね

国についてもそうで、同じく入試では「どの国にどんな産業があって、その産業が日本とどういう関係にあるか」ということを図表とともに問う問題も確実に出ます。これも都道府県と同じで、わからないものはわかる情報を元に考え、想像して導き出すことが必要になります。

いずれにせよ、最初は「都道府県=ただの丸暗記」でもいいのですが、そこから発展していくのが当たり前の時代になっているので、「都道府県の名前も場所もわからない!」という子がいたら、それを中学までに改善しないといけない、ということですよ!

とにかく、寺子屋でも人気の「日本地図パズル」でもなんでもいいので、最低限名前と場所はおぼえましょう。すべてはそこからです。

「勉強」がイヤなら、日常から学ぶことも!

都道府県絡みの市販教材はたくさん出ていますので、本屋でそれをチェックしてみるのもよいですが、お金をかけなくても、スーパーで野菜や肉を買うときの「産地」を気にして会話しながら買い物することも大きな学びにつながります。

イチゴ一つとっても、

「栃木で生まれたから『とちおとめ』なんだよ」
「『あまおう』はとちおとめに対抗するために福岡で生まれたんだ」

という話もできますしね。

「このイチゴ、くまモンの絵がついてるから熊本産だね」

でもいいでしょう。

 

深い話をするためには親御さんも勉強しないといけませんが笑、今はスマホがありますから、すぐに調べるというのでもいいでしょう。

大切なのは、日常でも、

「なんでとちおとめって言うんだろう?」
「なんで熊本産のイチゴが多いんだろう?」

のように、クイズ形式で考えてもらうこともいいですね。

都道府県名がわざわざ書いてあるわけですから、その情報を利用しない手はないですよ。

鹿児島は「黒豚」で有名ですが、実際肉用のブタの飼育頭数1位は鹿児島です。

宮崎は「地鶏」で有名ですが、実際肉用ニワトリの飼育頭数1位は宮崎です。

まずはそういった身近なところから、都道府県と産業をおぼえていってもらうのが、一番、苦痛なく、記憶に残りやすい覚え方ですね。

それに、日本で生活していく以上、高校受験になっても、大人になっても、そうやって都道府県の情報に関連付けて考えることはなくならないわけですし、だからこそ、ムリなく、楽しく、確実に、都道府県の学びを深めていく必要があります。

 

ちなみに最近は、「どこの都道府県のどんな産業がナンバーワンか」というのはネット検索すればすぐ出てきますが、広告収入狙いのサイトも少なくなく、情報元が古かったりすることもあるので、確実で、わかりやすい最新情報を、ということでしたら、中学受験塾の社会の問題の元ネタでよく使われる『日本国勢図解ジュニア版 日本のすがた』を1冊購入して手元に置いておくのもよいですよ!

 

毎年新しいデータに改訂されるので、今年出たものは第53版!という歴史あるデータブックですが、一応、小中学生を対象とした「ジュニア版」で、サイズもA5版で200ページちょっとと使いやすく、お値段も1100円+税で、非ジュニア版『日本国勢図絵』の値段も分量も半分強ですので、大人でも読みやすいと思います。

ただ、フルカラーではないし、図表と文字解説だけなので、よほどの地理好きか笑、受験生以外は読む気にならないかもしれませんが笑。

こちらは現物が手元にあるので、また時間があったら詳しくご紹介したいと思います。

寺子屋に通う子でも「見てみたい!」という方は言っていただけたらお見せしますよ!

  • この記事を書いた人

メンター 田中聖斗

名古屋市守山区で地域の学び舎『鳥羽見寺子屋』を主宰。塾に行けない・行きたくない子の学習指導や、子どもたちの学びを促す特別授業をやっています。子どもたちに寄りそうことを重視し、どんな子でも受け入れています。作家・企画屋・家庭教育アドバイザー・教材開発者です。花粉症の舌禍免疫中のため、現在は年中メガネです。

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