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プログラミング教育って必要なの?全国学力調査の問題にもプログラミング?

鳥羽見寺子屋では、1月よりかねてより保護者さまから要望の多かった「プログラミング教室」を始めることとしました。

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「プログラミング教室」は高い!…でも必要なの?

鳥羽見寺子屋では毎年3月に利用者向けのアンケートをするのですが、毎年要望が多いのが「プログラミング教室」です。

学習指導要領の改訂に合わせ、プログラミング必修化していますし、教育業界でも年々取扱教室の数が増えていていますが、保護者さま目線で考えると、とにかく、プログラミング教室は月謝が高い!という声を聴きます。

だいたい月謝の相場は1万円前後が多く、それ以上のところもありますし、その他に教材費や入会料が必要になったりすることもあります。

これは決してぼったくっているワケではなく、大抵は、リースのPCとかコンテンツ利用料とか、後はプログラミングを教えられる講師の確保が必要だったりするからというのもあるので、サービス提供者側からすれば妥当な金額ではあるのですけど、それでも小学生の習い事としては高額な方ですよね。

もちろん体験授業はありますが、

「別にプログラマーになるわけでもないし」
「本当に続くかどうかもわからないし」
「だったらそのお金を他の習い事に使いたい」

と思う人も少なくないと思いますし、

「というかそもそも、プログラミング教育って本当に必要なの?」

と思い、プログラミングを学ばせることに躊躇される方もおられるかもしれませんね。

それでは、今回、寺子屋でプログラミング教室を始めることにした(ニーズがある以外の)理由は何か?

それは、子どもたちがプログラミングを、

「できないと困るから」

そして、

「できた方がいいから」

です。

 

プログラミングができないと困ること

そもそも、「プログラミングができない」からといって仕事に就けないとかそんなことは今後もありえません。みんながみんなそういう仕事に就くわけではありませんからね。

ですが少なくとも、学校教育には確実に「プログラミング」というのが入り込んでいます

たとえば、今年から高校も対応した新しい「学習指導要領」では、

小学校→理科や算数や総合的な学習の時間で、
中学校→技術家庭科の「技術」で、
高校→新しい科目「情報Ⅰ」が必修科目で、

小学校で教科が指定されていないのは、あくまでも「プログラミング的思考を身につけさせるため」、としているからですが、中高では教科の中で実際のプログラミングを教えることになっていて、高校で必修科目なったので今後は大学入試にも出ます

プログリズムWebサイトより

「大学受験なんて、まだまだ先のことでしょ?」
「学校でちゃんと教えてくれるんでしょ?」

と思う方もおられませんが、残念ながら、現実はそうも言ってられません

たとえば、今の小学校の教科書では、「学習指導要領」に基づいて、算数や理科の教科書にもプログラミング的なフローが一応紹介されているのですが、プログラミングってのは、やってみないと本当にその動作が行われるかわからないものです。

そういう意味では「理科の実験」に近いものなのですが、じゃぁ学校で、理科の実験のように、子どもたちがパソコンでプログラミングをして「ああ、こういうことなんだ」と理解させられる授業が同じようにできるか?

「教科」じゃないのでそれは現実難しい、という学校も多いです。

また、単なるパソコンの操作だけではないので、教える先生方の負担が大きく、そこまで指導しきれない学校もあるわけです。

 

全国学力テストにも「プログラミング」が登場!

でも逆に、学校がそれくらいなのだから、

「プログラミングはそこまで重視しなくていいのでは?」

と考えるのはキケンです。

というのも、そんな現場もあることを考えず、プログラミングを教えている前提でテストにしてくることもあるためです。

その最たる例が、今年の春に全国の小学6年生を対象に実施された、「令和4年度 全国学力・学習状況調査(通称:全国学力テスト)」です。

このテストでは、算数の大問4「図形」の問題として、「プログラミング的思考」を使った図形の作図方法を問う問題が4問出ました。

しかも、算数は全16問しかない中の4問なので、全体の4分の1がプログラミングに関わる問題だったのです。

「令和4年度 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」より

近年のテストは「長文化」から「資料の読み解き」に変わってきているとはいえ、そこに「表」とか「グラフ」ではなく、プログラミングのフローまで入ってきたのです。面食らった子も多かったでしょうね。

上記はその大問4の(1)だけの部分ですが、「図が描けるプログラム」の動作がどういう処理で行われているかということを理解していないとなかなか難しい問題で、2択+ミスの書き換える(イを「左に120°回転する」にする)だけの問題ですが、正答率は49.1%です

※ちなみに最小公倍数を答える問題の正答率は72.4%でした。

あくまでもこれは「プログラミング思考」の問題なので、プログラミング経験のない大人でも解ける人は解ける問題ではありますが、「読解力」が弱かったり、「プログラム」というものがどういうものかわかっていない子には、「何を言っているかわからない」とか、それ以上に、「何をどうすればいいのかもわからない」状態になります。

 

英語もプログラミングも「小学校で教えている」前提

もちろんこの「全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」そのものは、あくまでも成績に関わらない文字通り「調査」なので、今の今で心配することではないのですが、算数の最小公倍数がわかるといったようなことと同様に、「プログラミング的思考ができる前提」で問題が作られるようになっているのです。

学力テストの問題の元ネタ?

学力テストの「多角形のプログラム」の問題の元となったのは、文部科学省が発行した「小学校プログラミング教育の手引き」に「プログラミング的思考」を身につけさせる例として載っている「正多角形を書く」プログラムだと思われます。

このように、「算数の多角形の作図とかをプログラミングでやらせるとよいよ」という見本は提示してはいるし、そうじゃなくても、学習指導要領に記載した「プログラミング的思考」は教えているだろうから、できるだろうと、そういう発想です。

しかし、これは「大改革」された英語と同じで、現場の子どもたちは明らかについてこれていない。

参考中学英語が"3倍"難しくなっているので、対策必須です!

2021年度から、『学習指導要領』の全面改定により、中学英語が格段に難しくなりました。実際の新旧教科書を比較しながら、何が大変で、どんな対策が必要かをまとめました。

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そしてそれがさらにステップアップした状態で、中学の「技術」、高校の「情報」でも同じようなことが起こり得るし、なんなら大学入試問題はナチュラルにこういった問題が出てくる可能性もあります

というかすでに中学でも、「技術のプログラミングの宿題※が全然わからない!」「勉強の出来る子も理解できていなかった!」ということが起こっています。

※今年の中3の宿題では、Excelのマクロで、入力された数字から計算結果を出力するプログラムや、条件分岐をさせるマクロのプログラムをVBAで書けという問題が出されましたが、ほとんどの子が理解できていなかったそうです。

日本の学校教育は、「わかる」ことよりも、「教える」ことが優先され、教えていることを「わかっている」前提でテストにします。

だから、プログラミングが出来ないと「困る」わけです。

 

プログラミングができた方がいいこと

プログラミングができないと困ることがわかっていただけたかと思いますが、それ抜きにしても、プログラミングに「慣れて」おくことは、パソコン操作はもとより、学校生活においてもプラスの影響があると言えます。

そもそも、プログラミングは、コンピュータに対して「命令→実行」のプログラムを作ることですが、少しでもミスがあれば、期待どおりに動作しないものです。

学校の勉強もそうですが、子どもというのは「できたつもり」ということがよくあります

漢字も英語もスペルが違うのに「ちゃんと書いた」と言うし、数学も付けるべきマイナスがついていなくても「合っている」と丸付けしたりもするし、漫然とワークの答えを写しただけでも「勉強した」と言ったりしますが、これらはまさに「できたつもり」の最たる例でしょう。

しかしコンピュータはそんなことを一切許さないシビアな存在です。

ドラえもんみたいに「気持ちをくんでくれるAI」もありませんから、「正しい手順」を構築したプログラムを作らないと、きちんと動作をしないので、

なぜ、うまく動作しないのか?

どうやったら、うまく動作するのか?

そもそも、どういうプログラムを作るべきか?

考える必要があります。

問題解決のための"主体的な"思考力が育つ

そもそもプログラミングというのは、一発でうまく行かないことがほとんどなく、「どうやったらうまく行くのか」試行錯誤していきながら望んだ結果を導き出す必要があり、そういった試行錯誤をする中で「考える力」が身につきますから、プログラミングの問題だけじゃなく、問題解決の手段として「プログラミング的な思考法」が使えることで、課題に直面したときに乗りこえる思考力が身につくわけです。

そういうプロセスを通じながら、未知の事態に対応できたり、予測できたりする能力を磨いていくことができます。

また、プログラミングは、普通の勉強のように「やらなきゃいけないこと」をやらされるのではなく、「物を作る」という主体的なプロセスを通じて思考力を育てていきます

そのため、「これをこうしたらこうなる」「あれをしたらどうなるだろうか?」と自分から積極的に考えられるようになり、他のことにもそれが活かせるようになっていきます。

こういった「論理的思考力」を身につけさせるのは結構時間がかかったり、勉強(特に数学)ができなきゃいけなかったりするので、これができる子はそう多くないのですが、プログラミングだと、そういったスキルを楽しみながら身につけていくことができるわけです。

もっとも、そこまで行くには「ちょっとやった」ぐらいではなかなかたどり着きませんが、くり返しくり返し、最初はお手本通りに、その内自分で「ああしたい」「こうしたい」と考えてプログラムをして行くことで、そういったスキルが育っていくのは間違いありません。

 

プログラミング学習が「勉強」や「運動」と違うところ

また、プログラミング学習のいいところは、思いどおりのプログラムができると、必ず結果としてフィードバックが得られる、ということがあげられます。

そもそも、学校の「勉強」というのは、基本的に「正解がある」ものを使って、正解にたどり着くための「考える力」を身につけるような仕組みになっています。

そうすることで、「正解がないもの」に対しても、自分なりに考え、自分なりの正解を導き出していけるようになってるんですね。

けれど、その「正解」があるだけに、自分が「出来た」と思ったテストでも、自分より常に高得点を取る子もいるし、自分の限界まで頑張ったことがあっても、自分よりできる子がいれば評価されにくいのが現実です。

つまり、なんだかんだ言って人と比べたり、比べられがちなのです。

プログラミングの場合は、同じ結果を得るにしても、アプローチは色々な方法があって、「正しい手順で書かないと動作しない」という「正解」はありつつも、「答え」は1つじゃないから、人と比べられにくい。

あくまでも、自分が作ったプログラムなんだから、自分との勝負なんで、「自信」や「成功体験」を得やすいんです。

そういった意味で、発達障害がある子など、人と比べられて苦労しがちな子にもマッチすると言われています。

 

プログラミングしなくていい時代が来る!?

ただ、プログラミングが人生に「絶対必須」かと言われると正直微妙です。

「AIに支配される」というのはちょっと極端な話ですが、「AIやICTを活用する」人材が求められているのは確かですし、当然のことながら収入面でもプラスに働くことでしょうし、コロナ禍でそれがより顕著に見られました。

例えば料理人であっても、デジタルサービスを使った宅食サービスや、シェフの出張サービス、オンラインでの料理教室などでピンチをチャンスに変えた人もいたわけです。

だから、デジタルツールを使いこなしさえすれば、多くの人にとって「プログラミングまでは必要ない」のも事実です。

たとえば最近だと、サイボウズ社のオンラインシステム構築サービス「kintone(キントーン)」のCMなんかが、それをわかりやすく提示していました。

通常、多くの会社では、大量のデータを処理するときに、スキルが必要なデータベース管理ソフト「Access(アクセス)」ではなく、同じマクロソフト社製で、どのパソコンにも入っている身近な「Excel(エクセル)」を使うことがほとんどです。

ただ、Excelはそもそも「表計算」するためのソフトなので、「このデータとこのデータをつなげて、それを元に新たなデータを作る」みたいな複雑な処理をするには、自動実行させるプログラム(マクロ※)を作れなければ、人力でデータを処理していたわけです。

※VBAというプログラミング言語を使ってExcelに作業を命令させることができるプログラム。たとえばアルバイトでも、一般事務の時給が1200円くらいでもマクロが使える人の求人は時給2000円前後だったりする。

日本の企業は(役所も)ITに投資せず、なんでもExcelで済まそうとしがちで、CMで泣いていた人は、まさに「天文学的な時間を要して」そういう作業をしていた、というわけです。

ちなみにこのYouTube動画、kintoneのチャンネル登録者数が1万人にも満たず、有名女優も出ていないのに、2022年11月現在で、再生数が3000万回を超えているので、よほど共感する人が多かったのでしょうね。

 

プログラマーを目指すわけではない!!

そんな感じで、プログラミングができなくても困らないサービスや商品が増えていく現実があるとはいえ、プログラミングができることで拓(ひら)ける未来があるのも事実です。

「ゲーム会社に就職できる」「プログラミングができれば給料が高い仕事に就ける」といったこともありますが、それだけではありません。

たとえば、IT長者でもあり、誰もが知っている物を作った人たちは、プログラミングが出来た人が多いという事実があります(※以下、敬称略)。

創業者がプログラミングできた(海外)

アップル、アマゾン、インスタグラム、グーグル、テスラ、フェイスブック(現メタ)、マイクロソフトなど

創業者がプログラミングできた(国内)

2ちゃんねる、サイボウズ、ゾゾタウン、メルカリ、楽天市場など

この中には、マイクロソフトのビル・ゲイツやアマゾンのジェフ・ベゾスのように「元から天才的なプログラマー」という人もいれば、

アップルのスティーブ・ジョブズや2ちゃんねるのひろゆきやホリエモンで有名な堀江貴文のように「子どもの頃からプログラミングをしてきた」という人もいます。

しかし、これらの会社を作った創業者で、今も現役のプログラマーとして働いている人はいません

自分は事業を立ち上げたり、経営する側の立場になって、プログラミングはプログラマーに任せているんですね。

 

創業者にプログラマーが多い理由

そもそも、なぜ多くの人に使われている物を作った人にプログラミング経験者が多いのか?

実は、プログラミングって、コードを打つことも大事ですけど、「どういう物を作るのか?」という設計が一番大事なんですね。

「こんなのがあったらなぁ」と想像するだけなら誰でもできます。

しかし、プログラミングの経験がある人は、想像するだけにとどまらず、

「プログラミングでこういうことを実現できます」想像したことを現実に創造するための道筋を立てられるわけです。

極端な話、プログラミングができれば一人でもサービスを作ることができますしね。

子どもたちに(ネタとして)人気のひろゆき氏なんかは、そんなプログラミングが「発想力」を育てると語る本を出したばかりです。

現役のプログラマーでなくても、プログラミングの経験があれば「こういう設計にすればうまくいく」「現在の技術でこういったことはできる」ということがわかるので、使いやすく、満足のいく、多くの人に受け入れられるサービスを作れるんですね。

そうして彼らは、プログラミング自体は優秀なプログラマー(エンジニア)に任せて、自分自身は違う立場で、現場を知っている人間として、商品やサービスを次々と世に生み出してきたわけです。

 

「創造力」を身につける1つの手段として

つまり、プログラミングで大事なことは、プログラマーになることではなくて、

自分でプログラミングが出来るようになることで、新たなものを「想像するだけでなく創造できる」ようになる、ともいえます。

たとえば「手からビーム」のような、子どもの想像がほとんど現実化しないのは、そこに実現可能な技術的裏付けがないからです。

プログラミングができれば「技術」に強くなるので、その実現可能な裏付けを踏まえて物を考えられるようになり、地に足を付けつつも、想像力の羽根を伸ばしていくことができるわけです。

これは、今後の先行きの見えない社会において必要というか、重視されるスキルでしょう。

もちろんこれは、プログラミング教室に通うだけで身につくスキルではなく、自分でプログラムを書けるようになった先にあるものですが、何事も最初はまずは人のしていることを真似して、自分の物としていくプロセスがあります。

そのための方法論として、独学でやるか、教えてもらうか、といったことがありますが、いずれにせよ、学びながら、「やらされて終わり」で終わるのではなく、自分で何かを創り出せるようになることが大事です。

プログラミングのいいところは、何かを創り出そうというときに、絵とか音楽のような特別な才能を必要とせずに、実際に形になるものを創り出せることです。

つまり、その気になれば誰でも「創造力」を手に入れられるってことです。

それがプログラミング教育の最大のメリットでしょう。

もちろん、そのためには、そのプロセスが楽しくなければ続きませんし、続かなければ能力は育ちません。

だから誰しもがプログラミングで創造力を身につけられる・・・なんて調子のいいことは言えませんが、ひと言だけ確実に言えるのは、プログラミングを学ぶ事は、「創造力」を身につける1つのキッカケにはなる、ということです。

あとはそれをどう活用するか、ということですね。

  • この記事を書いた人

メンター 田中聖斗

名古屋市守山区で地域の学び舎『鳥羽見寺子屋』を主宰。塾に行けない・行きたくない子の学習指導や、子どもたちの学びを促す特別授業をやっています。子どもたちに寄りそうことを重視し、どんな子でも受け入れています。作家・企画屋・家庭教育アドバイザー・教材開発者です。花粉症の舌禍免疫中のため、現在は年中メガネです。

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