寺子屋の学び

今月の歌は「赤鼻のトナカイ」の原曲!誕生秘話は感動話です

月曜と木曜の英語クラス、今月の歌は、来月はクリスマスということで、11・12月で一曲の歌をマスターしてもらいます。

発音が難しめですが、曲自体は誰もが知っているあの歌です!

 

今月(と来月)の歌は「赤鼻のトナカイ」!

「真っ赤なお鼻の~トナカイさ~ん~は~♪」でおなじみの「赤鼻のトナカイ」が今月の歌。

Wikipediaによると、「サンタが街にやってくる」、「ジングルベル」と並ぶ三大クリスマスソングである「赤鼻のトナカイ」ももちろん海外生まれの曲です。

原題は「Rudolph the Red-Nosed Reindeer」
※reindeer=トナカイ

日本語に訳すと、「赤鼻トナカイのルドルフ」です。

日本語の歌詞では名前がなかったトナカイの名前は、実は「ルドルフ」というんですね!

日本ではなじみのない「ルドルフ」ですが、英語圏では、曲のタイトルになるくらいですから超有名です。

ですが、「ルドルフ」というトナカイは最初は存在しなかったそうです。

もともと、今のサンタクロースの文化に一番大きな影響を与えた『サンタクロースがやって来た(クリスマスの前の晩)』という作品には、8頭の優秀なトナカイが名前と共に書かれていますが、その中にルドルフはいなかったんですね。

それがなんで、9頭目の「赤鼻のトナカイ、ルドルフ」が生まれたのかというと、別の人が追加したんです。

 

その前に歌詞を読んでみよう!

そんな原曲の裏話は一旦おいといて、まずは日本語の歌詞と比べて何が違うのか見ていきましょうか。

Rudolph, the red-nosed reindeer
Had a very shiny nose
(赤鼻のトナカイルドルフは、とても輝く鼻を持っていた)
And if you ever saw it
You would even say it glows
(君のその鼻を見たら、光っていると言いたくなるでしょう)

All of the other reindeer
Used to laugh and call him names
(他のトナカイはみんな、笑ったり悪口を言ったりしていました)
They never let poor Rudolph
Join in any reindeer games
(彼らはみじめなルドルフを、遊びには混ぜてあげませんでした)

Then one foggy Christmas eve
Santa came to say :
(ある霧の深いクリスマスイブにサンタが来て言いました)
"Rudolph with your nose so bright
Won't you guide my sleigh tonight?"
(「とても輝く鼻を持つルドルフや、今夜はお前が先頭でソリをひいてくれないか?」)

Then how the reindeer loved him
As they shouted out with glee
(それからトナカイたちは彼を気に入り、大喜びで叫びました)
"Rudolph, the red-nosed reindeer
You'll go down in history."
(赤鼻のトナカイ、ルドルフ。君は歴史に残るんだ)

※call A names=Aの悪口を言う

どうでしょう?

日本語(の中でもっとも有名な新田宣夫訳)版とちょっと違う所がありますが、だいたいの意味合いは同じですね。

まぁ、日本語では「いつもみんなの笑い物」ぐらいだったのが、原曲では「悪口を言われた」「遊びにも入れてもらえなかった」ということなので、もっとひどい扱いだったようですが💦。

 

「ルドルフ」が消えた理由と、歌い方のポイント

では、日本語版の訳ではなぜ、「ルドルフ」が抜かれたのかというと、知名度がなかったのもあったでしょうが、入らなかったから、というのが大きな理由のようです。実際に同じ所を比べてみるとわかります。

曲の歌い出し、原曲の英語版では

Rudolph, the red-nosed reindeer

となっている部分を

赤鼻トナカイのルドルフは

と日本語に訳した場合、同じフレーズに入らないんですね。

歌ってみるとわかりますが、これだと2フレーズ必要で、だから、

Rudolph, the red-nosed reindeer
Had a very shiny nose

の2フレーズを、

真っ赤なお鼻の
トナカイさんは

と、訳したようです。ルドルフをあきらめて。

当時(1960年)の日本には「ルドルフ」というのはなじみもないですしね、トナカイも日本にいない動物ですから、「トナカイさん」と割り切って書いたのでしょう。

こうなった理由はもう一つ、日本語では一音一音をハッキリと発音しますが、英語では「ルド-フダレッノ-ドレインディーァ」のようにギュッと縮めたように発音します

これは、英語の発音が日本語と違って、基本的に「子音+母音+子音」とか、「リエゾン(リンキング)※」を効かせて、音を短くしたりつなげたりして発音するため、英語は短い時間でたくさんの音や情報を入れられるためですね。
(※リエゾンについての説明はコチラ

この辺は「日本語」と「英語」の発音の違いでもあるので、歌うポイントとしても、日本語的に一音一音ハッキリと発音するのではなく、英単語を一音一音ハッキリと発音するのではなく、リズムに乗せて聞こえた音を続けて再現することを意識してもらうことが大事になります(でないと歌えません!)。

英語はとにかく「リズム」が命です。

 

おまけ:ルドルフ誕生秘話

なお、先ほどお話しした「ルドルフ」が9頭目に追加された理由ですが、こんなエピソードがあったそうです。

ルドルフを生んだのは、アメリカのコピーライターである、ロバート・メイという人で、裕福な家庭に生まれたものの、1929年の世界恐慌で破産し、大学を卒業したロバートも給料の安い仕事につくしかなく、結婚して娘が生まれたものの、奥さんもガンになってしまい、治療費のため生活も苦しかったそうです。

そんな時、ロバートは仕事で「お客さんにプレゼントする絵本のための話」を作る作業に取りかかっていた時に、自分の娘に、「どうしてウチはみんなと違うの?」と言われたそうです。

お母さんは病気で、生活も楽じゃない。

当時は4才だった娘さんは、純粋に思った疑問だったのでしょうが、これがロバートの創作意欲を刺激しました。

自分も子どもの頃、体が弱く背も小さく、みんなからいじめられたことを思い出して、シカゴ動物園のトナカイが好きだった娘のために、「みんなと違うからといじめられているトナカイ」の話を作ろうと思ったそうです。

そこで、8頭の優秀なトナカイと共に世界中を飛び回るサンタクロースによって、「みんなと違う」からいじめられるトナカイの、イジメられるの原因である赤い鼻が必要とされ、他のトナカイができない、霧の中で先導する『赤鼻のトナカイのルドルフ』というストーリーができたのです。

これが、空前の大ヒット!

今回紹介する歌になったり、絵本になったり、アニメになったりと、アメリカから世界に向けて「赤鼻トナカイのルドルフ」は羽ばたいていった、ということでした。

 

今は「赤鼻のトナカイ」でも、きっといいことがある!

このように、不幸な環境でも、決してあきらめずにいたら、幸せになれる、というサクセスストーリーがこの「赤鼻のトナカイ」の原曲にまつわるエピソードでした。

『赤鼻のトナカイ・ルドルフ』でのメッセージで、

「みんなと違う」けど、

「だから、できることがある」というメッセージに置き換えたのは、

娘に対して、「不幸に思うかもしれないけど、ちゃんと生きていればいいことがあるんだ」と伝える意味もあったんでしょうね。

人は「欠点」に目が行きがちですが、「欠点」というのは他の人と比べて違う所であり、それが時には「長所」にもなる、というある種の真理を含んでいるので、世界中で受け入れられたのかなと思います。

実際、ロバートは、会社の著作権となっていたこの作品の権利を無償でもらい、奥さんは不幸にもガンで亡くしましたが、その後に再婚もしています。

「生きていればいいことがあるんだ」

を体現した人生だったわけですね。

この歌を聴いただけでは、そんなメッセージが込められているなんて思いもしないでしょうが、意外と奥が深いエピソードでした。

 

参考
  • この記事を書いた人

メンター 田中聖斗

名古屋市守山区で地域の学び舎『鳥羽見寺子屋』を主宰。塾に行けない・行きたくない子の学習指導や、子どもたちの学びを促す特別授業をやっています。子どもたちに寄りそうことを重視し、どんな子でも受け入れています。作家・企画屋・家庭教育アドバイザー・教材開発者です。花粉症の舌禍免疫中のため、現在は年中メガネです。

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