先週の話ですが、塾教材大手、学書さんの展示会&セミナーに行ってまいりました。
昨年度はなかったセミナーですが、テーマは2025年度より始まる「愛知県公立中高一貫校」と塾の対応です。
ちょうど今、小5の子が導入初年度にぶち当たると言うことで、塾としては小5生から公立中高一貫校対策を打ち出していきましょう、という内容のセミナーですね。
中学受験は小5から準備するケースが多いからですね
ここ、鳥羽見寺子屋は基本的に、学校の学びの補完というスタンスでやっているところです(つまり勉強が嫌いな子が多い)。
ですから、おそらくハイレベルな中高一貫校に「行きたい」という子はあまりいないだろうなと思うのですが、それでも、子どもが「行きたい」と言ったら対応せねばなりませんし、業界のことを知っておかないといけませんからね。
しっかり情報収集してきましたよ。
県立中高一貫校の注目度は想定以上!
セミナーの参加者はざっと見ただけでも百人近く?ギッシリでした。
やはり、愛知県立中高一貫校の注目度は高いですね。
それもそのはず、愛知県が行った県立中高一貫校「明和高校附属中学校」の説明会には、定員1,500名に対して、2,500名が応募したというくらいの注目ぶり。
ちなみに募集人員は80名です😅
国立では、愛知教育大学附属名古屋中学校、名古屋大学教育学部附属中・高等学校がありますが、ちょっとどこか縁遠い存在なイメージがあります。
名古屋大学教育学部附属中・高校は、将棋の藤井聡太八冠の母校ですね(卒業前に中退していますが)。
しかし、今回新設される県立の中高一貫校は、「明和」「半田」「刈谷」「津島」という高校受験でおなじみの(しかも人気の)高校ですから、イメージが湧きやすい。
さらに高偏差値ですから、「ハイレベルな高校に中学から入れる」というメリットが明確ですので、注目度が高いのもうなずけます。
義務教育なので、中学の間は私立と違って学費がかかりませんしね
愛知県は長年「公立高校」の人気が圧倒的でしたが、近年は大学の進路が見えやすく、授業料無償化の影響で私立高校の人気が高まっています。
それも結局は「失敗してほしくない」という親御さんのニーズに合致しているからですね。
そういった意味で、今回の県立中高一貫校は、高校受験で失敗する前に、中学に入る時点で入れるなら入った方がいい、という考えになるのもごくごく自然かなと思います。
「受験のための勉強」になりがちな、高校受験を回避して、学びに集中できるというのが一番大きいと思いますけどね
明和高校附属中学校の入試の倍率は?
そんなわけでセミナーの内容ですが、スピーカーは、全国最大の、公立中高一貫校の中学受験生用の模試(公立中高一貫校 適性検査対策模試)を実施している「公中検模試センター(以下、公中検)」の方に来てもらっての内容でした。
昨年、エデュケーショナルネットワークさんが学悠出版さんのセミナーでは、まだ詳細がわからない部分が多かったので、全国的な話を踏まえた上で、「こうなるんじゃないか」というお話がメインでした。
今回のセミナーでは、だいぶ概要が見えてきたので、それに向かって塾はどうやって対策をしていくか?という話がメインでした。
そういう意味ではビジネス戦略的な話が多かったのですが、興味深いのは、明和中高一貫校の倍率の予想ですね。
去年のセミナーでも、全国的な傾向として、だいたい初年度は10倍以上と想定されていましたが、説明会の盛況ぶりを踏まえて、
「倍率は20倍くらいになるかもしれない」
という衝撃の発言が出ていました。
倍率20倍??
倍率20倍って、
たとえば200人受けたら10人しか受からない
ってことですからね。
これはスゴい競争率ですよ。
募集定員は80名とされているので、単純計算して1600人との戦いになると。
定員80人の説明会に2500名(保護者と子ども含む)の応募ですから、ありえなくもないですね
ただでさえ愛知県は公立中高一貫校がなかった「最後の都道府県」とも言われているようですから、それだけ注目度は高いということです。
特に、人口比の多い名古屋市内にはいくつも県立高校があるのに、初年度は名古屋市内で中高一貫になるのは明和高校のみ。
ということで、明和高校の倍率は、他の県立中高一貫校よりも高くなることが想定されるだけに、ひょっとしたらもっと上の数字になってもおかしくなさそうです。
参考情報
公立中高一貫の県立千葉中は初年度で28.63倍(男子)を記録したこともあるようです。
つまり、
生半可な気持ち(と準備)では受からないんじゃないの?
ってことですね。
やっぱり中学受験塾に通わせるべき?
公中検さんによると、公立中高一貫校が始まるときに、塾生の保護者から、公立中高一貫校の問い合わせを受けて対応したものの、翌日に塾生が辞める、という事態がけっこうあるようです。
つまり、「バッチリ対策していきますよ!」と言えない塾は、不安を感じて転塾されちゃうということですね。
なんだか世知辛い話です…
競争が激しくても、公立中高一貫校に行きたかったら、やっぱり確実に行ける方がいい、ということで、中学受験のノウハウがあるような塾に行く人も出てくるのも理解はできますが、面白い話も聞きました。
首都圏のとある塾では、公立中高一貫校と離れた地域だったので特にそれ用の準備をするつもりもなかったのですが、塾生が「そこに行きたい」と言い出したので、その子に合わせて対策をしていったら、見事に合格してしまって、その実績をもとに、翌年から塾生がどんどん集まるようになった、と。
とにかく初年度はわからないことが多いなりに、公開情報もあるわけですから、そこから想定される、合格するために必要なものを逆算して準備をしていけば、実績のない塾に行かなくても合格できる、ということですね。
とはいえ、逆に言えば「対策」がないと無理、ということでもありますが・・・
少なくとも、愛知県立中高一貫校は公立高入試の入試問題を作っている愛知県教育委員会が主幹なので、当然、公立高校入試と求める人物像や問題も似かよってくる、と言うことなので、高校受験のノウハウがあれば、今、中学受験をやっていない塾でも、その気になれば対応できるような気もしました。
アノ人の中学受験は!?
ちなみに、先ほど藤井八冠が国立中高一貫校である、名古屋大学教育学部附属中学校(名大附属中)に行っていたという話をしましたが、藤井八冠が中学受験したのは、将棋に専念するために高校受験を避けたい、という親御さんの思惑からです。
対策が小6の12月からだったので、塾に行ったらいわゆる「中学受験用の問題」が出る普通の私立はムリですと言われて、名大附属中にした、という話があります(ソース:中日新聞)。
名大附属中は、日本で唯一の併設型国立中高一貫校なので、受験問題もそこで作っています。
ですから、よくある中学受験テクニックよりも、豊かな人間性や学びへの意欲などが見られる問題(作文も)になるため、中受対策ができていない藤井聡太でも、もともとの高い学力+思考力&新聞を読んで時事問題にも精通していたということで乗り切れたようです。
鉄道マニアで地理にも詳しそうですしね!
まぁ、藤井聡太の例は置いといて、もともとの学力が高いのは大前提でも、やっぱり対策が必要なのが中学受験なので、ただただ「ウチの子は勉強ができるから」という軽い気持ちで受験すると、単なる記念受験になってしまいますよ、ということですね。
ちなみに藤井八冠の両親はともに国立大卒です💦
中学受験は加速していくのか?
中学受験がさかんな首都圏では、学力が二番手、三番手の公立高校はどんどん中高一貫化していて、私立・公立ふくめかなりの中高一貫校があるそうです。
そのため、中受向けの塾は伸びる一方で、高校受験をしない子が増えるため、中学生向けの塾の人気は下がる一方とか。
ちなみに首都圏はほとんどが「学区制」を廃止して、好きな中学を選べるそうで、その辺の要因もあると思います
東京なんて学区制を廃止して20年経つそうです。
そういった背景もあって中受が『2月の勝者』みたいな世界になっているわけなんでしょうが、それがそのまま愛知県にも適用されるかというと、しばらくはなさそうな気がしました。
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『二月の勝者』15巻は、受験校を考えるという意味で見所豊富でした - 鳥羽見寺子屋
こんばんは。中学受験をテーマにしたマンガ、『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』をご存知でしょうか?ドラマ化もされたので名前は知ってるけど、内容は詳しく知らないという方が多いかもしれませんね。冒頭から、君た
toribami.terakoya.nagoya
それでも、これだけ注目されているということは、子どもも減っていることをも踏まえると、今後、他の地域のように私立のみならず公立の中学受験が活発になって行くのは目に見えています。
ようするに、中学受験はビジネスチャンスなんですね、塾業界的には。
ただ、逆を言えば、経済的な不平等がないような公立中高一貫校ですが、結局、経済的にゆとりのある家庭の方が対策にお金(と親の時間)的に有利なので、結果中学受験も有利になる、という状況が愛知県にもやって来そうな気がしました。
完全に教育格差が加速しているような気もしますが…