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2025年度から始まる愛知県公立中高一貫校入試の倍率はスゴいことになる!?

鳥羽見寺子屋でも実施している、「愛知全県模試」を主催する学悠出版さんの展示会&セミナー(二部制)に行ってまいりました。

セミナー第一部の内容は、前回のブログでもお話しした、2025年度から一部で導入される、愛知県の併設型公立中高一貫校の情報を中心とした中高一貫校の入試情報でした。

併設型中高一貫校

中高一貫教育をする学校の中で、中学で入学した子たちがそのまま高校に進学するだけでなく、高校入試を経て入学する生徒も受け入れる中高一貫校のことで、多くの学校がこの方式を採用。
私立だと高校からの入学からを受け入れない「完全型中高一貫校(中高一体)」というのもある(名古屋圏だと愛知淑徳、金城学院、南山)。

今回のセミナーの内容は、基本的には愛知県教育委員会の提供する情報に基づく内容ではありますが、セミナーのスピーカーが、全国の入試を研究しているエデュケーショナルネットワークさんということで、他県での中高一貫校情報の入試情報などを踏まえつつ、「愛知県ではこういうことが想定される」「こういう対策が必要になる」という内容でした。

 

倍率が鬼ヤバい!?公立中高一貫校の入試の現状

衝撃的なのが、ほかの都道府県の公立中高一貫校の入試の「倍率」ですね。

導入初年度では、倍率が10倍以上になることも珍しくないようです。

しばらくするとそれが落ち着いて3〜5倍くらいになるそうですが、それにしても結構ですね。

話によると、

「公立だから学校の延長のようなもの」

「学校ではいつも百点だから大丈夫でしょ」

「公立だから塾に行かなくても受かるだろう」

「私立と違って教科書を逸脱はしないだろう」

と考える保護者さまがおられるようで、塾にも行かずにチャレンジするものの、最近は学力上位校が中高一貫校になることが多い関係で、全然受からないと。

たしかに、愛知県でも中高一貫校が導入される高校は、名古屋だと旭丘に次ぐ偏差値の「明和(偏差値67.2)」だし、知多エリアのトップ高「半田(63.0)」、三河だと岡崎や刈谷に続く「時習館(64.3)」「豊田西(62.8)」といった感じで、ヘタな私立中よりもレベルが高そうな学校ばかりですから、軽い気持ちで何も対策せずに受けたら完全に玉砕しますよね。

※偏差値は愛知全県模試データ

むしろ、高校受験を避けるために中学受験というものがあるという性格もありますから、より競争が激しくなるということが想像できます。

まして公立の上位校に中学から行ける「メリット」は大きいものですから、とにかく初年度はすごい競争が起きそうですね。

 

「公立」でも、結局は中学受験!

そのため、「公立」とはいうものの、「中学受験」であることには変わりはないので、結局、塾に行っている子の方が合格率が高いと

理由は実に単純で、たしかに扱う内容は公立も私立も学校で習う内容を元にしてはいるものの、出題する形式が、膨大な量の文や資料を読み解くような、学校で出ないタイプの問題であるため、対策しないと時間内に得点を上げられないんですよね。

令和4年実施 横浜市立中高一貫校適性検査Ⅰ

これは前回の横浜市立の中高一貫校の適性検査の内容ですが、まるで公立高校入試の問題かと思うくらいの文字量です。

内容のベースにある知識は確かに「教科書レベル」ですが、問題の出し方は「中学受験レベル」です。

国語と社会の複合問題で18ページありますが、「思考力」「判断力」「表現力」を問うためにこういう問題を出す傾向が全国的にもあるようです。

だから、普通に学校に行っているだけの子が、何も対策せずに受験するのはなかなかに大変だと。

全国学力テストでも良い点数が取れていれば別ですが、あれより難しいと考えた方がいいです。

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「とりあえず受験」はキケン!

学校によっては「作文」や「面接」を重視するところもあるそうですが、その結果、そういうのだけ良くできる子が入学したはいいものの、授業に全然ついていけないということもあるそうです。

それでも「学校が楽しいので、成績最下位でもいい」と開き直る子もいるようなので、何がよいかは本当に人によりけりですが、とにかく、公立といっても入試問題はかなり大変なので、結局、公立の中高一貫校が増えようと、塾に行く子に有利な状況が、何か変わるわけではないなぁ、という感じがしました。

公立は「入試」ではなく「検査」

公立の学校は、中高関わらず、「入学後の授業についていける学力があるか」という「検査」を行うという目的なので、「入試」とか「受験」と言わず「学力検査」という言い方をするそうです。

もちろん中には、学力だけじゃないコンセプトの中高一貫校もあります。

それでもやっぱり、理系とか国際系とかは、それなりの学力が求められるようです。

ちなみに全国的な傾向として、「理系」の中高一貫校は男子が多く、外国の大学にそのまま進学できる資格を得られる「国際バカロレア」を目指す「国際系」の中高一貫校は女子が多いそうです。

英語を「楽しい」と思うのは会話が好きな女の子が多いし、日本はジェンダーギャップが最悪ですから、女の子が国際系に進むのは将来の選択肢としてはいい選択かもしれませんが、まだまだ卒業した子がいないようなので未知数です。

愛知県でも「津島」と「西尾」が国際系になるようですが、どこまで教育体制を整えられるかちゃんと見ないといけませんね

また、理系の中高一貫校はいろんな県にあるようで、2026年度開講の愛知総合工科高校の中高一貫クラスも同じ存在になるのかなという感じですから、高校で入るより競争率が高くなりそうです。

ただ、中高一貫だからこそ、より深く学べるのは事実なので、本当にそういった方向への意欲が強い場合は選択肢に入れて行くといいでしょうね。

 

公立中高一貫校を目指すなら知っておいてほしい!

そもそも戦後の「公教育」は「平等」のために行われていたものですが、少子化が進み、時代が複雑になって来たので、今の中高一貫校を作る主な目的は「新時代をリードする人材育成」という、ちょっと語弊があるかもしれませんが、ひらたくいえばエリート教育ですね。

そういう意味では、私立の中高一貫校とコンセプトが変わらないので、対策も似たようなものになるな、という感じです。

いや、むしろ、私立中はいろいろな難易度の学校がありますが、公立中高一貫校はハイレベル校しかない、みたいになることもあります。

(東京では「都立中受験専門」をうたう塾もあるくらいなので)

特に愛知県の中高一貫校導入校は、トップ校に負けないように、新しいことをするとか、青田買いみたいなところもあるようですし、中高6年間をかけて、じっくり探求活動などをさせたりしたい、というところもありますから、試験のハードルは高そうです。

その上、どういうテストにしようが、子ども向けの問題を、塾という大人の集団が「対策する」というイタチごっこは変わらないわけで・・・。

しかも、公立だからというよりは、公立だからこその難しさも出てきそうな感じです。

むしろ、私立よりも「自立性」というのをかなり重視するでしょうしね。高校がそうですし。

そういう意味で、受け身な子は向かないかもです。

いずれにせよ、愛知県では2025年度(今の小4の子が入学するタイミング)、2026年度(今の小3の子が入学するタイミング)で順次中高一貫校が開講していくわけですが、

「私立の中高一貫校はさすがに入れられない」

「地元の中学校はあまり行かせたくない」

「できれば公立の中高一貫校に行ってほしい」

と、塾に行かずに合格を狙うのであれば、いずれにせよ、

「基礎学力」を高めつつ、「読解力」「思考力」「表現力」を身につけなければ、なかなか学力上位の公立中高一貫校は厳しいのかな、という感じがしました。

つまり、今からしっかりと、公立小学校で求められる以上の能力を身につけておかないと、厳しそうですよ!

  • この記事を書いた人

メンター 田中聖斗

名古屋市守山区で地域の学び舎『鳥羽見寺子屋』を主宰。塾に行けない・行きたくない子の学習指導や、子どもたちの学びを促す特別授業をやっています。子どもたちに寄りそうことを重視し、どんな子でも受け入れています。作家・企画屋・家庭教育アドバイザー・教材開発者です。花粉症の舌禍免疫中のため、現在は年中メガネです。

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