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『高校受験は内申点アップが9割』?

ちょっと話題になっている、『高校受験は内申点アップが9割』という本を読みました。

 

「部活に入ると内申点が上がる」は都市伝説!?

本の話に入る前に、まず、公立中学校の内申点のお話から。

これだけ情報が発達した時代でも、「内申を上げるために、部活入った方がいいんでしょ?」と、半ば都市伝説のように噂を信じている子が結構います。

親御さんや先輩から言われるからでしょうが、それはちょっと語弊(ごへい)があるなと。

 

寺子屋では、子どもがそういう質問してきた時は、愛知県の高校受験の仕組みと内申の話について説明をするのですが、簡単に言いますと、

「ボーダーライン上になった時にやっと内申書(調査書)を考慮してもらえるので、その時は有効」

であるというだけで、部活や生徒会活動をいくらがんばっても、(推薦でない場合)成績が悪ければほぼ無意味なのが現実です。

生徒会に入っていたり、部活で好成績を収めたことを点数化する地域はありますが、愛知の高校受験ではありません(大学受験ではあります)。

 

つまり答えは、

「部活に入っても内申は上がらない。ただ、同じ成績なら入っていた方が有利」

ということになります。

 

もちろん、部活をやれば、集中力や忍耐力が付いたりして学業にもプラスに働くことがありますし、また、部活の上下関係で礼儀作法も身についているので、先生からの印象がよくなりやすい、という間接的効果もあります。

また、帰宅部の子よりも部活をやっている子の方が先生の印象に残りやすく、先生は職員室で子どもたちの話をすることが多いので、「何か」をしている子は、話題に上ることもあるし、注目されやすく、努力も見えやすくなります。

だから、結果的に「部活に入った方が内申が上がる」と言えなくもありません。

 

そんな、先生の「心理」や、内申点が決まる仕組みを、まるっと解説してくれるのがこの本。

著者は、愛知県豊川市にある、内申点アップ専門の後成塾の塾長さんで、自称(?)「内申点アップ請負人」。

 

とはいえ、タイトルにもあるように、内申点を上げるテクニックだけを語るのではなく、先ほどの「部活に入ると結果的に内申が上がる」という話のような、

「内申を上げればふだんの勉強姿勢が変わり、結果的にテストの点もよくなる」

というテーマで一貫して語られているのが面白い点です。

 

そもそも今の「内申」ってどうなってるの?

今の親御さん世代の内申評価(通知表)は、相対評価でした。

相対評価というのは、

「全体」の中でどんなポジションなのか?

というものです。

 

クラス内での成績が上の方なら「5」や「4」で、真ん中なら「3」、悪い方なら「2」や「1」で、割合が決められています。

だから、どれだけ自分が頑張ろうが、評価が自分より上の子がいれば、自分は下になる、という仕組みです。

 

しかし、今は、相対評価ではなく、絶対評価になっています。

これは、

「基準」に対してどれくらい達しているか?

というものです。

 

そうなると、極端な話、テストの順位が高くても「5」じゃない場合もあり、順位が低くても「1」じゃない場合もあります。

実際、定期テストで高得点をとる子でも、通知表では「3」だったりします。

提出物・授業態度などの部分(主体性)で評価が低いため、テストの点が良くても、内申はよくない、となるわけですね(塾だけ頑張る子はありがちです)。

 

絶対評価ではあくまでも、「基準」をどれだけ満たしているか?

という評価になるので、昔よりも「3」の子が多く、「1」の子はかなり限られます。

そういう意味では、成績が良いはずなのに内申が低いといった、「不幸な子ども」を作らない仕組みと言えます。

 

ただ、逆に言えば、その「基準」を満たさない限り、内申点は上がらないのが、今のシステムです。

 

なぜこうなっているのか? という部分を話すと長くなるので結論からいいますと、大前提として、文部科学省が定めた、(特に公立の)学校教育の指導指針となる『学習指導要領』の方針がそうなっているからです。

資質・能力の三つの柱

文部科学省公式『学習指導要領「生きる力」』より

あくまでも、学校は勉強だけを教えるのではなく、「人間教育の場」なんだというのが大前提にあって、今は特に「結果ではなく経過(プロセス)」を評価するという評価基準が作られているのです。

なので、テストという「結果」だけで評価しないようになっているのです(←ここ重要です!)。

 

内申点アップは「テクニック」!?

お子さんがいる保護者の方からすると、そんな大きな教育論よりも

「内申点をなんとかしたい!」

「高校受験で失敗させたくない!」

と考えるのが普通ですよね😅。

 

その点、

この本の著者は「内申点アップ請負人」を名乗るだけあって、アドバイスは具体的で実際的なものです。

 

あまり内容を細かく書くとネタバレになってしまうので、一部抜粋してみますと、

内申点アップへのアドバイス(一部)

  • 朝の会、帰りの会で担任の話をちゃんと聞く
    ➡先生の話を聞けない生徒が授業をちゃんと聞けるはずないから
  • 提出物は字を丁寧に、「角」を意識して6割の速度で書く
    ➡雑な字の子が丁寧な字を書くと「主体的に取り組んでいる」と解釈してもらえる
  • 先生が話している時は先生の方に目を向け、筆箱で手元を隠さない
    ➡たとえ興味がなくても、一生懸命やるという姿勢を見せる
  • 廊下にいる先生ではなく、職員室にいる先生にどうやったら内申が上がるのか聞く
    ➡教室よりも、他の先生にも主体的に取り組んでいる姿が見えやすい

という感じで指示が細かい!

なんか、これだけ読むと小手先のテクニックな感じがするかもしれませんが、著者の狙いはそこではなくて、あくまでも「主体的に学ぶ習慣作り」に主眼を置いています。

 

塾で内申アップ「テクニック」の指導をするところは多々あり、ネットにもそういうものは多々あります。
(↓はLINEで情報共有した、内申アップテクニックをまとめたわかりやすい動画)

が、この本の著者は、もっと踏み込んで、「習慣作り」の方に重きを置くべきと説きます。

それも単なる「受験」とかのためではなく、今後の人生のためにもなるということです。

いまや大学入試でさえ一般入試と推薦入試、総合型選抜(AO入試)などの割合が半々になっています。その先の就活や会社の人事考課を考えてみても、いつも”誰か”があなたの"人間性”を評価しているのです。(桂野智也『高校受験は内申点アップが9割』青春出版社)

 

内申を上げることを徹底

著者は、自身がサラリーマンから塾の先生になった口で、そのサラリーマン時代に、「結果」を出してきたけど「評価」されなかった経験をたくさんしてきて、その大事さを痛感しているからこそなんですね。

なので、先ほどの一例にもあった、

「頑張ってますアピールのため、廊下ではなく職員室で質問しろ!」

という一見極端すぎじゃない? というアドバイスもしたくなります。

 

正直、

「そこまでさせるか!?」

と思う方がほとんどでしょう。

でも確かに、そこまで徹底して「何か」に取り組む生徒って、実はそんなに多くないんですよね。

 

中学生にもなれば、ほどんどの生徒は、

「自分は特別なものを何も持っていない」

と考えています。

 

だから、勉強も部活も

「努力してもムダだ」

という発想になるのです。

 

でも、そんな子が、「内申を上げる」ということに集中して努力すれば、結果的にテストの点も上がる、というのが著者。

 

特に絶対評価の中での受験ということを考えると、

「定期テストの点」を上げることだけ一生懸命になっても、内申が上がらない限り、受験にはプラスになりません

大事なポイント

高校に提出する内申書には、定期テストの結果を書く欄はありません
=内申点こそが高校受験では大事

 

だからこそ、

子どもたちがやりたがらないだろうことまで徹底的にやらせる、というわけですね。

 

もちろん、それが

「媚びを売っているようでイヤ」

と感じる人がいるのも承知の上でやらせるのは、著者の強い「信念」を感じます。

内申点は結果ではなく、プロセスを評価するものです。内申点がアップすると言うことは、勉強の途中経過が改まるということなのです。途中経過が何かというと、「基本的な学ぶための姿勢」です。(同)

評価するのも人間、されるのも人間なのです。(同)

 

「テスト」のための努力より…

我々大人はついつい、「テスト」だけで子どもたちを評価しがちです。

しかし、「テスト」は本来、文字通りその子の勉強してきたことを「試す」というモノでしかないんですよね。

だから本来なら、テストは「目的」であってはならない

ですが、ついついそれが目的化してしまう。

 

まぁ、テストという目標があった方が人は頑張れる、というわけですが、現実は、テストがあることが苦痛に感じる子の方が多いでしょう。

なので、東京の方では、公立中でも定期テストを廃止した所もありますね(小テストがたくさんある)。

 

では、テスト以外の「目標」をなんにするか?

普通の塾は、「テスト=塾に通った成果」なので、テストの点を上げることに全力を注ぎます。

塾によっては、自塾の生徒が定期テストで「いかにいい順位だったのか」をアピールする所もありますね。

 

そんな中、この本で著者が訴えたいのは、これまでの「テスト」を目標とした指導よりも、「内申」を目標にした指導をした方が、結果的にテストの点も上がって、なおかつ受験にもプラスにも働く、ということなんですね。

内申点対策は、高校受験を乗り切るための一過性のものではなく、将来、自己管理能力が身につくなど、社会人になっても役立つものであると信じています(同)

 

 

この本のオススメ度は?

ちなみに、この本の著者は、さすが「内申点アップ専門」を掲げるだけあって、

「評価されるだけの努力をすること」

「努力を評価してもらえるようにすること」

にメチャメチャこだわります。

 

逆に、こだわりすぎて、ちょっと真似できないかも??

ということもあります。

 

たとえば、

著書の中に出てくる、親子でやる「自律ノート®」なんてのは、できない家庭の方がおそらく多いのでは? という感じがしました。

塾でやる前提の仕組みなので当然と言えば当然ですが……(熱意があればできると思います)。

そういう意味で、全部できたら確かに『高校受験は内申点アップが9割』と言えるな、とも感じました。

 

しかしそれ以外でも、

とにかく「内申」だけをテーマにしていて、特に愛知県の情報が中心なので、

「何が何でも内申点を上げたい!」

「内申点でモヤモヤしているのをなんとかしたい!」

という方には、大いに参考になる部分が多い本だと思います。

 

とくに、

「やっかいな内申点」

「社会に出た時の練習」と捉える考え方は、

 

保護者としても、

「学校の勉強なんて将来使わねーし」という子どもに、

「受験のため」と言うよりも、よほど心に響く話ができる、よい参考書になるのではないかな、と思いました。

 

この辺は、「勉強が苦手」という子が多い寺子屋ですから、寺子屋でも大いに参考にさせてもらいたいと思います笑。

桂野智也
『高校受験は内申点アップが9割』(青春出版社)

オススメ度 ★★★★

  • この記事を書いた人

メンター 田中聖斗

名古屋市守山区で地域の学び舎『鳥羽見寺子屋』を主宰。塾に行けない・行きたくない子の学習指導や、子どもたちの学びを促す特別授業をやっています。子どもたちに寄りそうことを重視し、どんな子でも受け入れています。作家・企画屋・家庭教育アドバイザー・教材開発者です。花粉症の舌禍免疫中のため、現在は年中メガネです。

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